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在日コリアンの子どもたちの絵と若手音楽家のコラボ 「PALAM×KIDS」

個性豊かな表現力に圧倒、ユニークでエネルギッシュな絵と音の空間

 在日コリアンの子どもたちの絵と若手音楽家のコラボレーション企画「PALAM×KIDS」(主催=グループ・パラン)が2月13日、東京・門前仲町のもんてんホールで催された。子どもたちのユニークな絵と気鋭の音楽家たちの奏でる音で、あどけなさと優雅さが織り交ざった夢があふれる空間が紡ぎだされた。

子どもの世界へ

最後を飾ったW・A・モーツァルトのクラリネット五重奏曲「イ長調K・58」
演奏前に子どもたちが描いた絵とともに生物の説明をする川上統さん

演奏後に拍手を送る観客たち

休憩中、会場に展示された子どもたちのとりどりの絵を鑑賞する観客たち

 企画は、日本各地18校の朝鮮学校に通う初、中、高級部の児童、生徒たちが描いた絵を背景に、在日と日本の若手音楽家たちが演奏をするというもの。

 当日は、4演目が舞台に上がった。はじめに作曲家・川上統さん(東京音楽大学付属高等学校非常勤講師)による組曲「甲殻」より「テッポウエビ」「シオマネキ」「ミジンコ」「タカアシガニ」「ガザミ」が披露された。子どもたちが描いた甲殻類の絵とともに一つひとつの生物や曲の説明、弦を指で弾き硬い甲殻を表現したバルトーク・ピッツィカートの技法に会場からは感嘆の声が。

 つづいて、作曲家・趙世顕さん(グループ・パラン代表)が手がけた「尹東柱の詩によるソプラノとチェロとピアノのための歌」(「手紙」「何を食べて生きる?」)では、伴奏に乗せた李允喜さんの端麗な歌声が詩の叙情を際立てた。

 また、C・ドビュッシーの組曲「子供の領分」より「T・グラドゥス・パルナッスム博士」「Y・ゴリウォークのケークウォーク」では、ピアニスト・苅谷麻里さんの華麗な独奏が観客らを子どもの世界へといざなった。

 最後は、W・A・モーツァルトのクラリネット五重奏曲「イ長調K・581」で幕を閉じた。

 演奏中には、曲を聴きながら絵を描く生徒の姿も見受けられた。休憩の合間に、観客らは会場に展示された個性豊かな絵を見て回った。

 東京中高の美術部に所属する高英載さん(高2)は、「コンサートに行く機会はあまりないので、とても刺激的だった。とくに『シオマネキ』はその世界観にグッと引き込まれるようでとても気に入った。また、会場には僕より幼い子たちの絵がたくさん飾られていて、発想が豊かで新鮮な気持ちになった。このような新しい試みはとてもすばらしいことだと思う。実際、音楽を聞きながら絵を描くことは楽しかったし、音楽と美術という異なる分野でも、芸術には共通点があることに気づかされた。今度は僕たちが主力となってやってみたい」と感想を述べた。

 埼玉から訪れた桜井稚子さん(37)は、「演奏はもちろん、子どもたちの絵が個性的で、この曲でこんなイメージがわくなんて…!?と、見ていて楽しいものばかりだった。今度は子どもと一緒に美術展にも行ってみたい」と語った。

 生徒を連れ会場に訪れた東京第2初級の李英心教員(25)は、「想像が広がるステキな演奏会だった。生徒たちは、鑑賞授業にとても積極的に参加する。今度は、生徒の描く絵を見て即興で曲を作ったりと、互いが同じ空間で作業できる場を作るのもおもしろいと思う」と話した。

可能性広げる企画

「尹東柱の詩によるソプラノとチェロとピアノのための歌」
C・ドビュッシーの組曲「子どもの領分」の独奏(苅谷麻里さん)

 今公演の発起人は、在日コリアン若手音楽家によるグループ・パランのメンバーで、チェリストの任Q娥さん(28)。昨年の初秋、埼玉県浦和市で行われていた「第38回在日朝鮮学生美術展」で子どもたちの絵に触れて感動、そのエネルギーに圧倒されたという。多くの人に在日の子どもたちの表現力を感じてほしい、それから音楽という目に見えないカタチでそこに参与したいと企画を提案。そして多くの音楽家の仲間と各朝鮮学校の美術教員たちの賛同、協力が加わり公演を実現することができた。

 公演に向け、各学校の美術の時間に公演で演奏する曲を生徒たちに鑑賞させ、インスピレーションで自由に絵を表現させた。普段、クラシックを聞かない生徒たちや授業にあまり集中しない生徒たちも、みんな楽しみながら絵を描いていたという。

 「作品は十人十色で独創的なものばかり。子どもたちの表現力の高さにあらためて驚いたし、大人には想像できないような発想があふれていた」(任さん)

 川上統さん(30)は、「企画内容を聞いて、ぜひ子どもたちとコラボしたいと思った。在日の知人も多く、子どもたちの絵に興味もあった。実際に描かれた絵は想像以上にすばらしく活気があった。在日の子どもたちの表現力は身近な日本の子どもたちよりも長けている気がする。また、このような企画を一緒にやりたい」と話した。

 任さんは、「今後も子どもたちの可能性を広げられるような企画を発案していきたい」と語った。(姜裕香記者)

[朝鮮新報 2010.2.26]