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京都朝鮮第1初級学校における恫喝・脅迫事件に抗議する声明

子どもたちへの人権侵害許すな

 「関東大震災における朝鮮人虐殺の真相究明と名誉回復を求める日韓在日市民の会」は、1月25日、京都朝鮮第一初級学校における恫喝・脅迫事件を憂慮し、抗議する全文次のような声明を発表した。

 09年12月4日、日本人のグループが京都朝鮮第一初級学校において「朝鮮学校が不法に公園を占拠している」として、朝鮮学校に通う子どもたちや教員に対して「スパイの子」「朝鮮人は出て行け」などの差別的な言辞をもって恫喝・脅迫する事件が起こった。こうした脅迫は、京都市や地域住民との協議を経て公園を利用してきた朝鮮学校に対する、事実と異なる不当な言いがかりであると同時に、明らかに特定の民族に対する差別に基づいている。

 私たち「関東大震災における朝鮮人虐殺の真相究明と名誉回復を求める日韓在日市民の会」(略称『1923市民の会』)は、これまで関東大震災における、日本人による朝鮮人虐殺の解明に取り組んできた。数千名の犠牲者を出したともいわれる関東大震災下の朝鮮人虐殺は、日本の朝鮮に対する侵略と軍事力を背景とした植民地支配の中で、朝鮮人に対する差別や憎悪、恐怖を背景として、国家・民衆によりありもしない流言が拡げられ、流される過程で起こった事件である。

 このたびの事件も、在日コリアンに対する差別と憎悪を前面に出し、社会的弱者としての児童生徒への罵詈雑言を浴びせかけたものである。しかも、不安を募らせ泣き出す子どもを保護すべき警官も、全くそうした動きを止めることはなかった。日本の政府も社会も、このような子どもたちを襲撃し、公然と罵るような排外主義的な動きを止めることはできていない。

 私たちは、関東大震災における朝鮮人虐殺を引き起こした原因との関連性に鑑みて、1923年9月1日の震災時に起きた、事件の教訓が全く生かされずに今なお暴挙が繰り返されていることに対して、これを深く憂慮し、強く抗議する。こうした暴挙は、多様な民族と文化を互いに尊重し共存する、平和な社会を志向するアジア民衆の希望と連帯を破壊しようとするものである。

 周知の通り、1994年に日本が批准した「子どもの権利条約」は、その第二条で「締約国は、その管轄の下にある児童に対し、児童又はその父母若しくは、法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見、その他の意見、国民的、種族的若しくは、社会的出身、財産、心身障害、出生又は、他の地位にかかわらず、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、及び確保する」と規定している。この原則に基づいて、全ての日本在住の子どもの人権・人格は尊重されねばならない。

 にもかかわらず、朝鮮学校の子どもの人権を踏みにじるような事件に対して、日本政府は朝鮮学校の子どもを保護せず、恫喝・脅迫を結果として黙認するかのような姿勢に終始した。日本政府は、当然なによりも子どもたちの人権が侵害されるような事態を避けるための措置を取るべきであったにも関わらず、である。差別されずに幸福に生きる権利、恐喝と脅迫のない平和な社会で生きる人間の基本的な権利は、全ての事項に優先されねばならない。多様な文化を相互に尊重すべき日本の市民社会の成熟性が問われているのである。

 私たちは、上記の問題について、この事件で被害を受けた子どもたちをはじめとした朝鮮学校の人々に対して、二度とこのような事件が繰り返されぬよう広く社会に訴える。日本政府に対しては、子どもの人権を保護することを最優先するよう求める。こうした事件を繰り返さぬためには、メディアや市民が一丸となって、民族差別や、人権侵害に対して普遍的な人権擁護の立場に立って発言し行動することが重要である。これは、この社会に生きる私たち一人一人の責務である。

[朝鮮新報 2010.2.15]