強制連行遺族が証言 遺骨調査求め、各地で集会 |
「アボジ!」と呼びたい 朝鮮半島出身の強制連行犠牲者の遺骨問題について考える証言集会「韓国・朝鮮の遺族とともに−遺骨問題の解決を!」が北海道、東京、京都、大阪、神戸、福岡など各地で開催された。集会では、南朝鮮から招かれた8人の遺族が数十年にわたる家族の苦しみや日本政府に対する怒りの心境を語った。遺骨問題に取り組む市民団体の関係者らは、日本政府がこの問題に真摯に取り組むよう連帯して声を上げていこうと呼びかけた。
生死知らされず
7日、東京・永田町の衆院第2議員会館では、同集会全国連絡会主催の院内集会が開かれた。日本の国会議員や秘書、報道関係者、市民ら95人が参加した。 集会では8人の遺族が紹介された。 1945年、父が強制連行された後に生まれた金錦順さん(65)は「父の生死すらわからない。一度でもいいので『アボジ!』と呼んでみたい。記録だけでも探したい」と涙ながらに訴えた。 姜宗豪さん(69)も、漁夫をしていた父が1943年、軍事物資の移送のため漁船とともに強制徴用された後、生死さえ分かっていない。 遺族たちは長きにわたり苦しんでいる。 父が1944年に軍属として強制連行され戦病死し、靖国神社に無断で合祀された李熙子さん(67)は、「20年以上にわたり100回以上、日本に来て活動してきた。父の記録は日本政府がくれたものではなく、日本市民の支援のもと、活動を通じて得たものだ。遺族の訴えを自分のこととして聞いてほしい」と訴えた。
南朝鮮の市民団体「太平洋戦争被害者補償推進協議会」共同代表の張完翼弁護士は、被害者や遺族が日本政府や関連企業を相手に訴訟を起こしてきたが、「実際には司法の手続きを通じた被害救済はほとんど不可能な状況だ。日本政府は調査、補償のための法律を速やかに制定すべきだ」と指摘した。
6日に訪朝を終えて帰国した全国連絡会の清水澄子共同代表は、平壌で出会った72歳の女性から、父が日本の警官に殺され、夫の父も強制連行され鉱山で亡くなったと打ち明けられたとし、「問題は朝鮮半島全体に及んでいる。日本政府は朝鮮を植民地支配した責任があり、過去を清算する義務がある」と指摘した。 藤谷光信参院議員(民主)は「全国には数多くの遺骨が残っている。ご遺族、お寺、市民団体と手を取り合って、政府が前向きに取り組むよう働きかけたい」と述べた。 今野東参院議員(民主)は「強制労働があった場所に碑を建てるなどし、二度と起こさないという決意を示すことが大切だ」と述べた。 集会では、菅直人首相が8月の談話で言及したとおり、日本政府が遺骨問題の解決に本格的に取り組むよう求める決議が採択された。(別表参照)主催者側は、この内容を盛り込んだ遺骨問題の解決を求める要望書を南の遺族、支援団体と共同で菅首相や外務省、厚生労働省宛てに提出した。 人道的対応を 日本政府は2004年12月、当時の小泉首相と盧武鉉大統領が強制連行犠牲者の遺骨返還について交わした合意に基づいて、05年に全国の自治体、関連企業、寺院などを対象に調査を行った。しかし、遺骨の調査や返還、遺族探しなどについて必要な説明がなく、関連資料が公開されないなど不備が多く、現場に不信が広がり、調査や返還に進展が見られなかった。 2006年、市民の立場から遺骨問題の解決を促進しようと、市民団体、宗教団体、民族団体が共同で、28カ所で証言集会を開催した。市民が声を上げることで政府を突き動かそうというもので、今回はその3回目にあたる。 しかしこの間、日本が朝鮮を植民地支配し強制連行や日本軍性奴隷制を否定する国会議員らが首相や大臣を歴任したことで、本来、人道問題として優先されるべき遺骨問題が政治・外交問題として扱われ、停滞を余儀なくされた。 関係者らは、日本の「政権交代」がこうした行き詰まりを打開する大きなきっかけになるのではと期待を寄せてきた。 菅首相は8月、「韓国併合」100年に際し発表した談話で「朝鮮半島出身者の遺骨返還支援といった人道的な協力を今後とも誠実に実施していく」と述べた。談話が北を無視し、「支援」や「協力」といった加害責任があいまいな表現を用いたことに批判が寄せられているが、「それでも遺骨問題に言及したことは前進だ」と評価する声もある。 遺骨問題に積極的に取り組んでいる曹洞宗人権擁護推進本部の工藤英勝氏は、無縁遺骨をどのように扱うのか、遺族をどのように探すのかなど、日本政府の責任ある対応を促しながら、「遺骨は物ではない。戦争や国家の犠牲者たちだ。人道的に取り組むべきで、そうした教育的配慮が不可欠だ」と訴えた。 上杉聰共同代表は、日本政府があらためて人道主義の立場を鮮明にし、軍民問わず強制連行犠牲者の遺骨返還を本格化させるよう求めながら、「アジアの人々から幅広い信頼を得る道へ進むべきだ」と述べた。(取材班) 遺骨問題の解決を求める決議文骨子
@日本政府や関連企業の謝罪、情報開示など遺族が受け入れられる条件のもとで遺骨奉還を実施すること [朝鮮新報 2010.10.18] |