各地の学校で創立50周年記念事業展開 活動の中心は「青商会世代」 |
「みんなで守る」土台構築を 今年、創立50周年を迎える各地の朝鮮学校では、生徒、教員、卒業生をはじめとする同胞らが一丸となり、年間を通じた記念事業を展開している。地域が一体となって学校を守り民族教育を発展させる地盤を築くため、まずは学校への関心を高めようと、さまざまな行事や活動が行われている。背景には、特定の同胞の支援に頼る学校運営から脱却し、「力のある者は力を、お金のある者はお金を、知識ある者は知識を」の原点に立ち戻り、一人でも多くの同胞、日本市民の理解と支援のもとで学校を発展させていこうという、共通の流れがある。地道な活動を通じて話題が話題を呼び、人が人を集めることで卒業生、同胞のネットワークが着実に広がっている。
群馬初中 全卒業生を対象に一斉訪問
群馬朝鮮初中級学校では、各世代の卒業生、各団体役員らで実行委員会を結成し、昨年から記念事業を開始した。昨年12月にはホームページを開設。学校での生徒の様子を伝えるとともに、記念事業のキャッチフレーズやロゴを募集し、事業の宣伝に努めた。そして4月以降、同胞野遊会、運動会、チャリティーゴルフ、サッカー大会などを開催し、事業を盛り上げてきた。 とくに現在、あるいは今後、子どもを学校に通わせる同胞たちにとって、学校の存亡は切迫した問題だ。そうした危機感から、これまでもさまざまな形で学校運営について議論が行われてきた。今回の記念事業は、同胞の学校への関心を一気に呼び起こす大きなきっかけになる。それだけに活動にも力が入る。 活動の中心は「青商会世代」。青商会や朝青、若手教員など、3世同胞青年たちの奇抜な発想、斬新な提案を、経験豊かな1世、2世の同胞、活動家らがサポートする形で、10月24日に行われる記念祝典に向けた準備が進められている。 現在、千人近い卒業生全員を対象にした訪問活動が一斉に展開されている。「探そう! 会おう!」をスローガンに、北海道から熊本にいたる各地に散らばった卒業生を訪問し、行事や同窓会の宣伝をしている。帰国した卒業生たちにも周知させた。 ほとんどの卒業生が、群馬からわざわざ訪ねてきてくれたことに驚き感謝しているという。こうした活動をきっかけに、同級生同士で記念式典への参加を約束するなど、話題が広がっている。 また、初めて同胞を訪問した青年らは、こうした地道な活動の効果と重要性を実感するようになった。訪問先で激励を受け、ときには厳しい言葉をかけられることで、同胞社会に対する問題意識が高まっているという。 ある実行委員はこう語る。 「直接会うことで、これまで学校や同胞社会と疎遠になっていた同胞との距離が縮まればいい。失敗することもあるだろうが、活動を通じて学校と同胞社会の将来を担う若手が育ってほしい」 これまでも「青商会世代」が学校支援、民族教育、地域イベントなどさまざまな場で存在感を発揮してきた。その成果から、学校の生徒数増加も見込まれている。 長年、同校で教鞭をとってきた安重根校長にとっては、実行委員や青商会、朝青のメンバーのほとんどが教え子だ。「学校を築き同胞社会を牽引してきた1世、2世の熱意を受け継ぎ、同胞社会の主役になっていることが誇らしい」と語る。 中級部2期卒業生の゙俊煥実行委員長も、「青商会や朝青の世代が力強く活動しているのでとても頼もしい。みんな手弁当でやってくれている。学校教育会理事も3世が多くなったが、これまで学校を支えてきた人たちが、がんばっている若い世代を後押ししてほしい」と語る。そして、卒業生や同胞の関心を幅広く呼び起こすことで、生徒数増加や財政支援につなげたいという。 ●群馬朝鮮初中級学校創立50周年記念祝典
10月24日、11時〜、群馬朝鮮初中級学校
福岡初級 「実践型」の活動で注目集め
福岡朝鮮初級学校でも若い世代が中心となり10月24日の記念祝典に向け記念事業を展開している。学校を守り、民族教育を強化し、子どもたちの明るい未来を切り開く「実践型」の活動だ。 スタートは早かった。昨年4、5月には活動家、学父母、卒業生、教員経験者などから民族教育や学校への要望、意見を幅広く集めた。それをもとに、6月に準備委員会を発足させた。生徒数の問題、校舎や教育環境、財政問題などについて議論を重ねた。民族教育への希望、学校存続への危機感、地域社会への貢献など、さまざまな思いが交錯した。 それらを集約する形で、9月に各世代、各団体代表ら約30人による実行委員会が結成された。以降、さまざまな行事を行った。4月には「民族教育集中月間」と銘打ち、学校ゆかりの地の散策、公開授業、教育講演会などが行われた。恒例の運動会、納涼祭も例年に増して盛り上がりを見せた。 趙星来校長は、「同胞の愛校心を実践につなげることが大切。同胞や学父母らが学校運営や民族教育について考え、意見交換する過程が、まさにウリハッキョの明るい未来を切り開く過程になる」と語る。 実行委員らもそう信じて、立て続けにイベントを打ち、毎週のように集まっては準備や議論を重ねてきた。同胞や生徒たちもそれに応えるかのように、夏場のイベントや記念式典に向けた公演の練習に積極的に参加した。教員たちも「同胞の期待に応えよう」と必死になって汗を流してきた。まさに学校と関係者が一丸となって築き上げた分厚い信頼関係によって、記念事業は一層輝きを見せている。 8月に行われた納涼祭には千人の同胞、日本市民が参加した。生徒や同胞の公演、青商会、朝青、アボジ会、オモニ会などの売店などで「50周年」を存分にアピールした。抽選会では、青商会が準備した50周年記念特等の豪華景品がサプライズイベントとして贈られた。 納涼祭のフィナーレは恒例の花火大会。同胞、日本市民らが一緒になってスタンドに腰かけ、1500発の打ち上げ花火を観賞した。同校が同胞の学校であるとともに地域の学校であることを印象づけた。 学校を支持する声は年々高まっている。卒業生や同胞だけでなく、学校を訪れる日本市民もこう評価する。 「家族のような温かい学校」「子どもたちが純粋でまっすぐ育つ」 17期卒業生の蔡徳生実行委員長は、こうした誇らしい学校を存続させたいと力強く語る。 「学校がなければ同胞社会もない。同胞の子どもが一人でもいる限り、学校を守る」 ●福岡朝鮮初級学校創立50周年記念祝典
10月24日、10時〜、福岡朝鮮初級学校 滋賀初級 地道な活動で同胞社会も活性化
滋賀朝鮮初級学校では、県下同胞が一丸となり同胞ネットワーク拡大のための活動に励んでいる。彼らの原動力となっているのは「滋賀で唯一のウリハッキョを守っていきたい」という地域共通の想いだ。 3月に発足した50周年記念事業実行委員会では、11月7日に開催される記念祝典の成功に焦点を合わせながら、同胞たちを継続的に地域ネットワークに網羅するための「基盤づくり」に力を入れている。 実行委員会では、とくに学校後援団体の「愛校会」結成に重点を置いてきた。 「愛校会」は、これまで個人や個々の団体で学校支援活動に努めてきた卒業生や学父母、学校関係者や同胞、そして日本市民らを、ひとつの大きな運動組織として束ねるための「土台」の役割を担う。 同校教育会理事でアボジ会役員も務める李相浩実行委員長(22期卒)は、「財政的な支援とともに、より多くの同胞を集めることが何よりも大切」と強調しながら、「民族教育を支援する同胞、日本の人々が互いに手を取り合い、ウリハッキョを守っていければ」と語る。 この間、実行委員会では、地域で行われてきた行事に、主催または後援として参画。同胞ネットワークの拡大に努めてきた。また、卒業期別に責任者を定め、同胞社会と疎遠になっていたり他の地域へ移住した同級生、知人を訪ね、地道な情報交換と宣伝活動を繰り返してきた。さらに、幅広い同胞の意見を収集し、50周年記念事業に積極的に反映してきた。 鄭想根校長は、「実行委員たちの地道な活動によって、学校と同胞の結びつきが一層強まっている」と喜びを語る。実際に、チャリティーゴルフ、同胞納涼祭など地域行事に参加する人の数は例年を大きく上回った。 記念祝典の準備に拍車がかかるほど、それに比例して同胞社会は活気を帯びている。 なかでも、同胞青年たちの成長は目覚しい。 朝青は、専従活動家がいない中でも、チャリティーストラップの制作と販売など祝典成功に向けた独自の活動を推し進めている。9月19日には学校創立記念サッカー大会を主催した。 朝青員たちは、実行委員をはじめとする先輩たちの姿が朝青世代を奮い立たせていると語る。 「自分たちも学校に貢献していかなければ」 次世代を担う主力としての自覚が芽生えている。 ●滋賀朝鮮初中級学校創立50周年記念祝典
11月7日、10時〜、滋賀朝鮮初級学校 (李泰鎬、周未來) [朝鮮新報 2010.9.21] |