留学同サマーセミナー「マダン2010」 もう一つの「ウリハッキョ」 |
留学同のサマーセミナー「マダン2010」が8月22〜24日、滋賀県希望ケ丘文化公園で行われ、同胞学生と関係者ら約200人が参加した。参加者たちは、スポーツ大会や講演会、討論、演劇、文化公演などのプログラムを通じ、互いの一体感を感じ、朝鮮人として生きていくための問題意識を深めた。
多彩な企画
「民族のルーツを教え、朝鮮人としての自覚を育んでくれる。何より、在日同胞の友だちとの出会いの場を提供してくれる留学同は、まさに『ウリハッキョ』のような存在」と、朴卓さん(大阪留学同、4回生)は話す。 今年のサマーセミナーは、留学同を一つの大学−「留学同大学」に見立て、学生たちのキャンパスライフを想起させるような多彩な企画が盛り込まれた。 特に、2日目に行われた「文化ライブ2010」は、初となる催しが目白押しで、同胞学生から大きな反響を呼んだ。この日会場には、大型、小型スクリーン計3台が設置されたほか、参加者全員にはペンライトが配られ、臨場感あふれるライブの雰囲気をより際立たせる演出が施された。舞台では、すべての留学同支部がそれぞれ演目を披露、サムルノリや民族舞踊、斬新な踊りなど、これまで時間を惜しんで練習に励んできた成果を発揮した。 同胞学生は、自分たちが公演に参加し舞台を作り上げる過程で、互いの連帯感を存分に体感した。 朝鮮民族としての自己のアイデンティティーを考える企画も多かった。 なかでも、参加者らに大きな共感を与えたのが京都留学同が行った演劇−「道」だ。 内容は、留学同に初めて参加した学生や、就職活動に励むメンバーが、それぞれ「差別」という壁にぶつかり思い悩みながらも、朝鮮人として生きていく決意と覚悟を新たにするというもの。劇中、就職差別に苦しむ主人公の一人を演じた申聖花さん(4回生)は、「役柄が自身と重なってすごく共感できた」と述べながら、「今回の演劇を通じて、卒業後どんな進路を選択するにしても、朝鮮人として自ら道を切り開く覚悟が何より大事だということを学んだ」と話した。また、「今は、とある日本企業に内定をもらっているが、自分が同胞社会のために何ができるか考えながら、もう一度進路を見直していきたい」と語った。
意見を共有
留学同では、年間を通じて各種セミナー、地域ごとの新入生歓迎会、成人祝賀会をはじめ定期的な学習会も行っている。 なかでも2泊3日の間、寝食をともにしながら全国の仲間と触れ合うことのできる「マダン」は、参加者らにとってもひときわ大きな意義を持つようだ。 自身最後となる「マダン」で、初めて班長を務めた金英乾さん(留学同東京、4回生)は、「例年よりいっそう学ぶことが多かった」と振り返る。高校まで朝鮮学校に通っていた彼は、日本の高校出身である仲間と意見を共有するなかで、とくに色々な発見ができたという。「自分は、民族教育を受け当たり前のように朝鮮人として生きてきた。けれど、日本社会のなかで、常に『朝鮮人であろうとする自覚』を忘れない彼らに接し、意見交換するなかで、初めて本当の意味で朝鮮人として生きるとは何かという問題に向き合い、認識を深め、考えることができた。」と話した。 徐映里奈さん(京都留学同、2回生)は、今回が初参加。日本人の父とニューカマーの母を持つ彼女は、「班別討論などを通じてたくさんの同世代の意見が聞けたことがうれしい」と語った。また、「異国で朝鮮人として生きていくのは正直大変なことが多いが、そうした意識を植えつけたのはほかでもない日本社会。留学同で得た出会いや培った知識を糧に、今後も朝鮮人として胸を張って生きていきたい」と述べた。 一方、今回行われた文化ライブで、見事な朝鮮語で留学同活動に対する自身の思いをスピーチした金知世さん(留学同兵庫、4回生)は、「舞台に立つ前緊張する自分に、留学同の友人やOBから激励のメールをたくさんもらった」と話しながら、「これまで、在日ということを打ち明けられずに苦しんできた自分が、朝鮮人ということを自覚し、自分らしくいられるようになったのは、こうした仲間の存在があったから。留学同は私の『居場所』。今年度で卒業するが、ここで出会った同胞学生とは一生繋がっていきたい」と話した。 実行委員長を務めた李英生さん(留学同東海、4回生)は閉会式のあいさつのなかで、「『マダン』での経験や教訓を、継続的に後期の活動に生かしていこう」と呼びかけた。(周未來) [朝鮮新報 2010.9.1] |