top_rogo.gif (16396 bytes)

李賛英さん米寿記念「花の絵」水彩画展 「華やかでパワフル」が魅力

苦労の末に開花した才能

 李賛英さんの米寿を記念する「花の絵」水彩画展が6月26〜27日、大阪・八尾プリズムホールで催された。2日間で同胞や日本市民ら約450人が訪れた。李さんが73歳の頃から習い始めた「花の絵ファンタジック水彩画」75点が展示され、完売するほどの盛況ぶりだった。訪れた人たちは、幻想的で美しい作品に魅了され、癒され、米寿を迎えますます元気な李さんの才能に驚いていた。そして、在日朝鮮人として力強く生きてきた李さんの生涯に思いを馳せた。

「底の深い魅力」

家族と記念撮影(前列左から2番目が李賛英さん)

 作品にはバラ、カーネーション、ひまわり、スイートピー、ゆり、桜、コスモスなど色とりどりの花々が花瓶に生けられて描かれている。しかし、作者が実際に目にするのは一輪の花だけ。あとは頭の中で花瓶に生けたり花束にしたり、想像力を働かせ、作品に仕上げるのだという。素朴さと華やかさ、優しさと力強さが同居する「底の深い魅力」が見る人を虜にする。

 訪れた人たちは、年を重ねるごとに魅力を増す李さんの作品に見とれた。そして、李さんを激励し作品の前で記念撮影をした。一番目の訪問者は田中誠太・八尾市長だった。女性同盟関係者や絵の仲間たちが大勢訪れた。

 作品の魅力は李さん自身の魅力からきている。

 李さんは1922年、済州島で生まれ、7歳の時に兄に連れられ父を追って大阪へ渡った。男4人、女1人の5人兄弟。家事を手伝うことばかりで絵を描いたことなどなかった。21歳で結婚し一男一女に恵まれたが、若くして夫を亡くした。以来、2人の子どもに高等教育を受けさせるため必死に働いた。養育費を工面するために夫との思い出の品も手放さざるをえなかった。印刷工場に20年勤め、その後は日本の友人たちと印刷会社を興した。その傍ら、女性同盟中東支部(現八尾柏原支部)で委員長を18年間務めた。仕事一筋で生きてきた。

友人たちに囲まれて(後列中央が李賛成さん)

 そんな李さんは73歳の時、大切に育てて花咲かせたチューリップを何となく鉛筆で描いてみた。これが「最初の作品」とされている。家族の勧めで本格的に「ファンタジック水彩画」(インテリアアート花の絵)を習い始めた。

 教室に向かう足取りは重かったという。「70歳を過ぎてどれだけできるのだろう」と疑問もあった。だが、生活や子育て、女性同盟活動など、何事にも一生懸命取り組んできた前向きさで挑み、何よりも絵が好きだということに気づいたことが大きかった。教室から帰ってきた李さんの目は輝いていたという。それからはめきめきと上達、さまざまな場で作品が発表された。そして、80歳の時に初めて個展を開いた。作品は高い評価を受けた。

 実は李さんと「ミョヌリ」(息子の妻)だけが知る「もう一つの初作品」があった。対象物は台所に買い置かれていたホウレン草だった。鉛筆と孫のクレパスで描いた。ホウレン草の茎の白からピンクに変わっていくラインが「絶妙の色合いだった」という。「絵心がDNAに刻まれているのでは」。実際、李さんの兄(三男)は1959年、朝鮮に帰国後、画家になったという。70歳を過ぎて絵の才能が開花した。

自慢のハンメ

「ひまわり」

「パンジーとチューリップ」

 今回の個展は、家族と親せきらが実行委員となり企画した。東京で暮らす親せきの男性陣は、女性として感じることが多いのではないかと、妻や子どもたちを快く大阪に送り出した。オモニ、ハンメは一家の誇りだ。

 李さんの姪の李顕玉さんは、「作品を見て癒されている。これまでは花瓶に生けた花ばかりだったが、今回は根を張った花もあった。パワフルで元気な一面が表れていた。悪い表現だけど、女手一つで子どもたちを育て力強く生きてきたコモ(伯母)は、タフで化け物のよう。すごい」と語った。結婚したときにプレゼントされた絵は、大切に飾っているという。

 孫の呉淑美さん(李さんの娘の娘)はチラシや案内ハガキを作った。「80歳の時の個展に比べ、作風や構図に広がりがある。年を重ねてもますますチャレンジを続けている」と感心していた。「私にとっては優しいハルモニで、泊まりに行って一緒に寝るのがいつも楽しみだった。それでいて、気持ちが強く心の折れない人。その両面が絵に表れている」と語った。

 ひ孫の金庚★さん(初級部2年、呉淑美さんの娘)は、学校で学んだ朝鮮語で「ハルモニ、誕生日おめでとう」と手紙を読んだ。そして、弟と一緒に作ったメダルを首にかけてあげた。李さんは、ひ孫が朝鮮学校に通っていることを誰よりも喜んでいる。

 李さんは、周囲の心配をよそに、今でも自転車を乗り回している。パワフルさは老いを知らない。青春真っただ中で創作を続けている。

 「みんなに喜んでもらえてうれしい。個展を準備し、来てくれた人たちみんなに感謝している」と語る李さんは、「絵はいつも誰かのために描いている。次は孫やひ孫たちのために心を込めて描きたい」と顔をほころばせた。(李泰鎬記者)

★=女へんに華

[朝鮮新報 2010.6.30]