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東京中高 北区十条朝日祭「アンニョンハセヨ2010」 「生徒たちの生の声聞けた」

多彩な行事で理解深め合い

 北区十条朝日祭(KJ祭)「アンニョンハセヨ2010」(東京朝鮮中高級学校、十条国際交流フォーラム「JIFF」共催)が13日、東京朝鮮中高級学校および東京朝鮮文化会館で行われた。東京都議会の原田大議員、花川与惣太北区長をはじめ地域の日本市民、同胞、学父母、生徒ら1300余人が参加した。今年で10回目となった文化祭は、「高校無償化」の権利獲得運動が盛んに繰り広げられている中で行われた。行事は、真の平和と朝・日友好、交流の輪を広げようと、公開授業、「十条国際音楽祭」、チョゴリファッションショー、帝京高校との共同シンポジウム、堀越高校との親善サッカー、文化公演、料理教室、各種売店など多様な内容を盛り込み、民族教育の実情とすばらしさをアピールし、相互理解を深める意義深い場となった。

「真の姿を知って」

朝高と帝京高校が行った共同シンポジウムの様子

 「高校無償化」問題を取り巻くさまざまな世論が広がる中、東京中高では4〜5日に日本市民を対象とした公開授業を行った。今回の文化祭でも、2時間授業を公開し、朝鮮学校の教育内容と生徒たちの姿を伝えた。

 1時間目は、多くの日本市民たちが高3の国語、数学、朝鮮史、日本語と英語の授業を参観した。伊藤涼子さん(42、北区居住)は、「生き生きとした先生の姿、生徒たちは真面目にノートに書き取り、教科書を朗読する姿が印象深かった。生徒たちが祖国と学校に誇りを持ち、1、2世の思いを受け継いでいこうとしているのがよく伝わってきた」と語った。ある日本人男性は、「授業を楽しく見て回った。言葉が違うだけで、自分の学生時代と同じだと思った」と話した。

 2時間目は、日本の各層の講師らを招いた特別授業が行われた。田中宏・一橋大学名誉教授、「グループほうせんか」西崎雅夫代表、「Vaww-Net.Japan」西野瑠美子共同代表、「チマ・チョゴリ友の会」松野哲二代表と「オッケトンムの会」千地健太代表、魚山秀介・帝京大学専任講師がそれぞれ講義をした。

 「ウリの会」の活動について講義を受けた卞莉奈さん(高3)は、「私たちを支援してくれる日本市民たちの力は大きい。その方たちと連携を深め、共に行動していきたい。今、『無償化』問題で運動をしているが、権利獲得に向け朝高生たちが主人公となり動かなければならないとあらためて感じた」と感想を語った。

 この日、校内には民族教育の歴史と在日同胞の権利獲得過程、「高校無償化」に関する展示物が並び、生徒たちが解説した。また、「無償化」適用を求める署名活動も行われた。

 三木譲さん(43、埼玉県居住)は、先日同校で行われた公開授業に続いて、この日も訪れた。「生徒たちには、一部良心的でない日本人もいるが、温かく見守っている日本人もいるから一生懸命学んでほしいと伝えたい。さまざまな報道が流れているが、もっと多くの日本人が直接朝高生たちと会い、彼らの真の姿が何なのかを知ってほしい」と話した。

「疑問を解き合い」

売店で売り子に徹する生徒たち

 帝京高校との共同シンポジウムでは、東アジアの領土問題と「高校無償化」問題をテーマにした研究内容が発表された。朝鮮学校中級部3年の社会科教科書の一部日本語訳なども展示された。両校の生徒たちは、互いの発表を聞き、討論をしながら理解を深め合い、朝・日関係改善における若い世代の役割について確認しあった。

 領土問題では、独島にスポットを当てた。「ただの領土問題ではなく、歴史認識としてとらえるべきだ」などと話された。

 「無償化」問題では、朝高生たちが「無償化」の法案内容やその可決経緯、朝鮮学校除外の不当性について指摘した。帝京高校の生徒たちは、「無償化」制度の趣旨、朝鮮学校を除外した政府の姿勢、今後の展望についての見解を述べた。

 また、朝鮮学校に対する疑問など、一般参加者たちとの質疑応答も交えながらディスカッションが行われた。

 「『無償化』に関する日本政府の見解をまとめてみた感想は?」との参加者の問いに、「除外には反対。日本に住むいろんな国籍の人たちと共存していくべきだし、みなが平等な扱いを受けるべきだ」と答えた。また、「国交のない台湾系の学校には適用され、朝鮮学校には適用されないことについては?」と聞かれると、「拉致やミサイルの脅威などを口実に、教育に政治問題を絡め朝鮮人差別を行うことは許されない。朝鮮学校除外は絶対に反対」との意見が述べられた。

 朝高生は、日本のメディアが朝鮮学校の教育内容について偏見に基づいた報道を行っていると指摘。「朝鮮学校の教育は決して『反日』ではない。民族的アイデンティティーを確立するための教育だ」と述べた。

 参加者のなかには、「朝鮮学校が除外されると聞いた時、私の母校も除外されるのかと心配だった。なぜなら、私が通った学校では、日の丸を掲げず、『君が代』も歌わないし、学園理事長の肖像画が飾られているから。日本の生徒さんたちも今回の朝鮮学校除外の根底にある問題について考えてほしい」という声もあった。

 両校の生徒たちは、3月から月に2回、顔を合わせ意見を交換し合い、シンポの準備を進めてきた。初めは互いの「壁崩し」から始まったという。しかし、幾度と会い話し合う中で壁はなくなり、親しい関係を築いた。

 帝京高校の女子生徒は、「シンポジウムを通じ、互いを尊重し理解し合うことが大切だと思った。在日朝鮮人たちと手を取り合い共生する社会を築いていきたい」と話した。

 シンポに参加した立教大学3年生の阿部千尋さんは、「生徒たちの生の声を聞けて良かった。日本人は、もっと朝高生たちの声に耳を傾けるべきだ。生徒たちは一生懸命学び、行動しているのに、大人たちの事情で彼らが苦しんでいると思うと、胸がつまる」と涙ながらに語った。

 40代の日本人女性は、「いろいろと理解することが多かった。『無償化』を早期に実現するために、日本人全体が声を大にして国に働きかける必要が急務である。生徒たちの学びの権利を政府が奪うことがあってはならない」と話した。

 朝日祭に向け、東京中高の生徒たちは「無償化」の署名活動を繰り広げながら、朝日祭のビラ配りを行った。多くの日本市民に朝鮮学校のすばらしさを伝え、より広範な人たちの支持を得るために、みんなが一丸となり宣伝活動を行った。

 朝高委員会の高英載委員長は、「日本の人たちがたくさん訪れ、朝日祭のイベントを楽しみ、署名までしてくれる姿を見て、朝鮮学校の良さを伝えられたと思う。また、私たちを応援してくれる日本市民が多いということを再認識させられた。今まで以上に生徒たちの力を発揮し、『無償化』問題や、学校生活で多くの成果を成したい」と決意を語った。(姜裕香記者)

[朝鮮新報 2010.6.21]