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祐天寺の朝鮮人遺骨 遺族不明のまま南に

責任回避、北は置き去り

還送遺骨追悼式(18日、祐天寺)

 日本の厚生労働省が祐天寺(東京・目黒)に預託していた朝鮮半島出身元軍人軍属の遺骨のうち、遺族が判明していない195人分の遺骨が19日、南朝鮮に持ち出された。遺骨は忠清南道天安市の「国立無縁墓地・望郷の丘」に安置された。

 日本政府は2008年1月以降、祐天寺に預託していた遺骨のうち、遺族がみつかった204人分の遺骨を3回に渡り返還してきた。しかし、今回は遺族がみつかった24人分だけでなく、遺族がみつかっていない195人分まで南朝鮮政府に引き渡された。

 これに対して、「遺骨は遺族に返されるべきだ。安易に移すと真相究明や責任がうやむやになり、犠牲者や遺族をさらに傷つけることになる」との指摘がある。朝鮮人強制連行真相調査団は遺骨返還の中止を求めていた。

 祐天寺には、本籍が朝鮮半島北部の427人分の遺骨と浮島丸爆沈事件の犠牲者275人分の遺骨が残された。

問題点は不透明なまま

 遺族がみつからない遺骨を南朝鮮に送ることには、多くの問題がある。

 祐天寺の遺骨については、偽遺骨や靖国合祀、生存者記載など、数年前から問題点が指摘されてきた。真相調査と遺族探しがどこまで行われたかは不明確だ。また、北南分断と離散家族問題が未解決の状況で、本籍地が南だからといって遺族が南だけにいるとは限らない。仮に北で遺族が見つかった場合、日本と南朝鮮の両政府に対して法的責任が問われることになる。さらに、本籍地が北の遺骨は手付かずのまま放置されている。北の遺族は2度も入国を拒否されている。

 「望郷の丘」に送られた遺骨については、遺族に通知されなかった、合葬などで個別性が失われた、朝鮮半島北部出身者の遺骨が送られていた、北側に遺族がいることが判明したなど、多くの問題点が浮き彫りになった。

 こうしたなか強行された遺骨の移送については、植民地支配と強制連行、遺族に通知せず数十年間放置した日本政府の責任がうやむやになるとの指摘がある。こうした憂慮の声に対し、南朝鮮の「対日抗争期強制動員被害調査及び国外強制動員犠牲者等支援委員会」の鄭善太委員長は本紙記者に、「両政府間できちんと確認された遺骨だけを持ち帰る。北に遺族がいないことは確かだ。無縁遺骨については今後、DNA鑑定も含め遺族探しを続ける」と述べた。

 18日、祐天寺では、日本の厚生労働省主催の「還送遺骨追悼式」が挙行され、日本と南朝鮮の政府関係者が9人の遺族と日本市民らとともに参列。献花し犠牲者を追悼した。

 日本の外相として初めて参列した岡田克也外相は追悼の辞を述べた。(取材班)

[朝鮮新報 2010.5.26]