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祐天寺の遺骨 無断で南に 犠牲者、遺族の尊厳踏みにじる行為

 日本の厚生労働省が祐天寺(東京・目黒)に預託している朝鮮半島出身元軍人軍属の遺骨のうち、遺族が判明していない219人分の遺骨が南朝鮮に無断で送られようとしている。18日、祐天寺で追悼式が行われ、19日に南朝鮮に持ち出されたあと、忠清南道天安市の「国立無縁墓地・望郷の丘」に安置される見通しだ。強制連行犠牲者の遺骨調査などを行う市民団体からは、安易に遺骨を移すべきでないとの指摘が挙がっている。

市民団体からは大きな反発

日本政府の責任逃れ

 祐天寺に安置されている遺骨に関しては、偽遺骨、靖国神社合祀といった問題がある。本籍地が朝鮮半島北部の430人分の遺骨は未だ放置されたままで、朝鮮で遺族が判明していても日本政府は遺族の入国を拒否している。2006年には、南部出身者のうち7人の遺骨が他人のものであり、うち2人は生存していた事実も明らかになった。

 日本政府は、こうした問題や疑惑に蓋をしたまま08年から3度にわたって祐天寺の遺骨返還を強行した。第1回の追悼式は、メディアと一般市民を完全に排除した形で行われようとして大きな反発を招いた。

 これまで、南朝鮮で遺族が判明した204人分の遺骨が返還されたが、今回は、本籍地が現在の南朝鮮にあるという理由だけで、遺族が判明していない遺骨が無断で送られようとしている。南北分断と家族の離散などによる複雑な現状を無視し遺骨までも虐げる非人道的な対応だと、両政府に対し非難の声が挙がっている。

 日本政府は戦後、自国民の遺骨を収集し解放国の遺骨も本国に返還した。唯一残されたのが朝鮮半島出身者の遺骨だ。日本政府は、南朝鮮政府からの返還要請を好機ととらえこれに応じることで、朝鮮人強制連行犠牲者の遺骨問題をあいまいに処理し、植民地支配から連なる過去の重大な犯罪についての補償義務から逃れようとしている。

 朝鮮人強制連行真相調査団の洪祥進朝鮮人側中央本部事務局長は「日本人の遺骨についてはDNA鑑定まで実施し手厚く対応しているが、朝鮮人については遺骨の確認も遺族の照会も行われていない。とりわけ、朝鮮に対しては1体の遺骨も返還されていない。こうした差別的対応は世界的に稀で、日本政府は国際的な非難を免れないだろう」と厳しく指摘する。

ずさんな遺骨の扱い

 今回の返還は日本と南朝鮮の当局者間の協議によって決められた。厚労省は「韓国政府から正式な返還要請があった」と説明している。この点について、「南朝鮮政府に何の権限があって遺骨を持ち出そうというのか」との指摘がある。北部出身者を含め遺族に無断で遺骨を持ち出し粉砕、合葬までした「前科」があるからだ。

 祐天寺のみならず、日本政府が戦後、南朝鮮に送った朝鮮人の遺骨に関しては、後にさまざまな問題点が明らかになった。とくに「望郷の丘」に送られた遺骨については、遺族に通知されなかった、合葬などで個別性が失われた、朝鮮半島北部出身者の遺骨が送られていた、北側に遺族がいることが判明したなど、多くの問題がある。

 南朝鮮のある遺族のケースでは、1944年11月に長崎県伊王島に強制連行され4カ月後に亡くなった父の遺骨を探していた息子が1年が過ぎてようやく「望郷の丘」で対面したという。父の遺骨は在日本朝鮮人聯盟が収集したが、49年に朝聯が強制解散させられ遺骨は日本政府に接収された。その後、民団が南朝鮮に持ち出し最終的に「望郷の丘」に安置された。2005年に日本の記者によって初めて息子に遺骨の所在が伝えられた。南朝鮮政府は遺族を捜さず数十年間、放置していた。

 「望郷の丘」には、本籍地が現在の朝鮮半島北部である同胞の遺骨も安置されている。「望郷の丘」のホームページ上で名前や本籍地を確認することができたが、最近になって閲覧できなくなった。

 遺骨調査を行ってきた南朝鮮の日帝強占下強制動員被害真相究明委員会が、調査業務が縮小された形で支援を主な業務とする新委員会に統合させられたことも無関係ではない。

 04年11月に発足した同委員会は、犠牲者や行方不明者を捜し出し真相究明、補償、尊厳回復する上で大きな期待が寄せられていた。しかし、過去清算を軽視する現政権になってからは、立証不可能などの理由で約10万8千件が未処理のままにもかかわらず、解散を迫られている。

 こうした中、業務存続のために祐天寺の遺骨の受け入れを急いだという指摘がある。昨年7月に挙行された3回目の追悼式では、「遺骨は本物か」「これまで放置された原因は何か」という報道陣の質問を南当局関係者が制止する場面があった。祐天寺の遺骨に関する日本政府との交渉の過程で、南側が北部出身者の遺骨を含むすべての遺骨を持ち出そうと日本側に打診した事実も関係者の話で明らかになっている。

 日本の民間団体関係者は「政治的思惑のために遺骨が利用されてはならない。まずは植民地支配と強制連行について責任がある日本政府が誠意をもって対応し、強制連行の形態にかかわらず明確な調査・返還の指針を示すべきだ」と指摘する。(取材班)

[朝鮮新報 2010.5.14]