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2010「在日朝鮮人歴史・人権月間」 奈良で集会 「無償化」適用を要請

平和と友好の新たな100年を

 奈良県の12の市民団体が共同で実行委員会を作り主催した2010「在日朝鮮人歴史・人権月間」関西集会が4月24日、奈良県解放センターで行われ、奈良をはじめとする各地の関係諸団体代表、同胞、日本市民ら約200人が参加。北南朝鮮との平和と友好の新たな100年を築くために共感の輪を広めていくことを確認した「関西集会アピール」と、「『無償化』制度の朝鮮学校(高級部)への適用を求める要請」がそれぞれ採択された。会場では写真展も開かれた。

「併合条約」は無効

約200人が参加した「在日朝鮮人歴史・人権月間」関西集会

 「韓国併合100年・今こそ平和と友好に向けて〜ともに学び理解しあうために」と題した集会は「劇団水曜日」の演劇「海を越えてつながる私たち」で幕を開けた。宝塚市の市政50周年イベント(04年)で朝鮮舞踊を披露した朝鮮学校の女子生徒に会場から罵声が浴びせらた事件を機に、市民たちが友好親善活動を繰り広げ、日本軍「慰安婦」問題の解決を求める意見書を宝塚市議会で採択(08年)するに至った過程を描いたもの。

 実行委を代表してあいさつした小南昌紀共同代表(奈良平和フォーラム代表)は、今年は「韓国併合」100年を迎える節目の年であり、過去の歴史を踏まえ未来に向けてどのような歴史を残すのかが問われていると強調した。また、「無償化」制度適用において朝鮮学校だけを先送りにしたことは、朝鮮学校の生徒たちを傷つける許しがたい暴挙だと指摘し、適用に向けて力強く運動を広げていこうと呼びかけた。

 集会では、康成銀・朝鮮大学校教授と有元幹明・「日朝国交正常化早期実現を求める市民連帯・大阪」共同代表が基調報告を行った。

 1905年「乙巳5条約」(保護条約)の法的問題について報告した康教授は、天皇への報告書である「韓国特派大使伊藤博文復命書」や、高宗皇帝の指示で条約を締結したとする「乙巳五賊」の弁明書である「五大臣上疏文」の偽造、改ざんが指摘されたことで、「合法論」の史料的根拠は再検討を迫られたとし、前提となる「乙巳5条約」が無効であることから、1910年「韓国併合条約」は成立していないと指摘。今後の課題として、「帝国主義国際法を前提とした法論争」ではなく、植民地支配そのものを不法と宣言する新しい「法的な枠組み」構築の必要性を訴えた。

 有元幹明共同代表は、歴史教育と日朝友好運動の現状と課題について報告した。有元共同代表は、日本のアジア侵略を正当化する論理として用いられる福沢諭吉の「脱亜論」や、「人さらい戦争」といわれる豊臣秀吉の朝鮮侵略を批判し、体系的な歴史教育の必要性を訴えた。また、日朝間に横たわる問題を解決するために必要なのは圧力ではなく対話であると強調した。

今なお続く悲劇

朝・日関係の改善を訴えた金順伊さん

 集会では、金順伊さん(70、奈良県橿原市)が「在日2世・70年の歩み」という題目で証言した。

 金さんは、炭を焼いて生活の糧を得た植民地時代、あらゆる差別を受けた解放後の家族の暮らしぶりについて語り、それでも今、自身が朝鮮人として生き、孫が朝鮮学校に通っているのは、民族の誇りを教えてくれた両親の愛情があったからだと述べた。しかし、日本で亡くなった金さんの母親は、朝鮮に住んでいた両親の最期を看取れず、朝鮮に住む金さんの妹は母親の墓参りさえ自由にできないという悲しい状況が今もなお続いていると複雑な思いを打ち明けた。そして、子どもたちのため、悲劇を繰り返さないよう、連帯した力でより良い未来を作っていきたいと語った。

 集会では各地の活動報告があった。奈良からは、生駒市議会での日本軍「慰安婦」問題の早期解決を求める意見書採択(09年)に関する報告と、「奈良の朝鮮人強制連行の歴史」についての報告があった。

 藤原好雄共同代表(とめよう戦争への道! 百万人署名運動・奈良県連絡会、憲法を活かす会・奈良代表)は、集会の成功は日々の活動の賜物であると強調し、正しい歴史を後世に残すとともに、金順伊さんの家族のためにもいっそう活動の輪を広げていこうと呼びかけた。

関係者の声「活動の広がり確認」

 集会に約200人が参加したことについて関係者は、「活動のつながりと広がりを確認できた」と手ごたえをつかんだようだ。

 洪祥進・朝鮮人強制連行真相調査団朝鮮人側中央本部事務局長は、金順伊さんのような身近にある「生きた歴史」や証言の収集、写真展開催など、草の根の活動を広げていくことは、朝・日間の近代史を理解し強制連行の真相を調査するうえで大きな意義があるとし、今回の集会をモデルケースとしてこれからの活動を展開していきたいと語った。

 集会の開催は、奈良の同胞社会にとっても大きな意味があった。

 尹元植・総連奈良県本部委員長は、「日本の根深い差別に少なからず慣らされていた側面があったが、地域で朝・日の人々が手を取り合うことで大きな力が生まれることが再確認された。今後、力強く運動を進めるきっかけにしたい」と語った。

 集会後の交流会には関係者だけでなく、日本軍「慰安婦」の被害女性たちと心を通わせたいと朝鮮語を学ぶ過程で、「劇団水曜日」と今回の集会の存在を知ったという人や、歴史教育のために参加した教員、眼前にある差別に心を痛めていたという多様な人たちが参加し、情報交換などで交流を深めた。(鄭尚丘記者)

[朝鮮新報 2010.5.6]