top_rogo.gif (16396 bytes)

自動改札の前で思う

 各地の取材先で必ず購入するものがある。乗車券や電子マネーとして利用できるICカードだ。「鉄オタ」と呼ばれるマニアではないが、ついつい興味本位で買ってしまった「SUGOCA」がきっかけで、コンプリートを目指してどんどん財布にたまっている。関東では「SUICA」、関西では「ICOCA」と呼ばれるもの。「SUGOCA」は九州のものだ。

 ICカード導入以降、乗車券&定期券は自動改札を「通す」ものではなく「かざす」ものになり、とても便利になった。しかし思い起こせば、小さい頃は定期券を駅員に「かざす」だけで改札を通ることができた。

 人件費の削減から得られる「豊かさ」もあるだろうが、定期の期限が切れていることに気付かず、心優しい駅員の助力を得て通学できた小学生の頃の風景はそこにはない。改札口は、もたつくだけで舌打ちされる殺伐とした空間になってしまった。

 ささいな日常が気になったのは花粉症の鬱積した気分からではなく、岡山の取材を通して、朝・日人士たちの骨太の付き合いを垣間見たからだ。岡山では、積み重ねてきた朝・日友好を土台に補助金増額運動を2年にわたり展開した結果、岡山市から22年ぶりとなる増額を得た。「無償化」除外の狂った風が吹く中での全会一致の決定は、その絆と今後の可能性を明らかにした。「助け合えない関係になんの意味がある」と彼らは言った。

 物質的な豊かさと同じように、精神的な豊かさと共栄の精神を大切にしたい。(丘)

[朝鮮新報 2010.4.19]