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シンポジウム「在日コリアン福祉の実践と可能性」

「人と人とのつながり」拡大を

 在日同胞福祉連絡会が主催するシンポジウム「在日コリアン福祉の実践と可能性」が20日、中央大学駿河台記念館で行われた。連絡会のメンバー、関東地方と長野、京都、大阪などから駆けつけた活動家、専門家、学生ら100余人が参加した。

「生活保護は当然の権利」

金永子教授

 シンポジウムでは、四国学院大学の金永子教授(連絡会副代表)が「在日コリアンと生活保護」というテーマで特別講演を行った。

 講師はまず、生活保護が日本国憲法第25条に規定された理念に基づいた法制度で、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」であるとし、在日同胞もこの権利を有すると強調した。

 また、「どのような手段を尽くしても最低限度の生活が保障されない場合に求められるのが生活保護である」とし、社会保障制度の最後に位置するセーフティネット(社会安全網)であるということについて解説した。

 講師は、生活保護が「持ち家があると対象に含まれない」「65歳以下や子どもがいるともらえない」などの誤解、「恥ずかしいからもらいたくない」「日本政府の世話になりたくない」といった否定的なイメージによって、生活保護が必要な同胞が権利を行使していないケースがあると指摘し、「生活が厳しくなったらまずは申請することを勧める」と述べた。

客席から貴重な意見が提起された

 講師は、在日同胞にとっての生活保護の問題点について、▼外国人は生活保護の権利がないと法解釈する主張がある▼子どもを朝鮮学校に送る場合、生活保護制度の中で教科書代や給食費など「義務教育を受けるのに必要なお金」が支給される教育扶助の対象に含まれていない▼申請にあたり不服申し立ての権利がある−ことなどを指摘した。

 また、在日同胞が社会福祉を適切に享受するための課題として▼地域住民の福祉増進に努める奉仕者である民生委員に在日コリアンを登用すること▼在日コリアンソーシャルワーカーなどの人材育成▼在日コリアンに対する理解を深めるための職員研修などの体制作り−などを挙げた。

 講師は、「生活保護を受ければそれですべてが解決する訳ではない。人間が人間らしい生活、幸せを感じられる生活を送るためには、生活保護制度が必要条件であるが十分な条件ではない」と指摘。独居老人などの実例を挙げながら、家族や親戚だけでない「人と人とのつながり」「孤立でなく連帯」が求められており、そのために必要なことについて考えてほしいと訴えた。

 質疑応答では、年金需給者も生活保護の対象であること、連絡会が生活保護の申請をためらう同胞のための窓口になってほしいなどの指摘があり、視覚障がい者の交流の場があればいいなどの提起もあった。

大阪・生野、「Tutti」、愛知「ポラムティア」 新事業開拓、活動経験共有

文鐘聲さん

 シンポジウムでは、各地の福祉活動経験についての報告が行われた。NPO法人同胞法律・生活センター の金静寅事務局長がコーディネーターを務め、太成学院大学専任講師の文鐘聲さん、都立よつぎ療育園の成基香さん(臨床発達心理士)、NPO法人コリアンネットあいちの張和詠さん(介護福祉士)が発言した。

 文鐘聲さんは、大阪市生野区における地域福祉と区民協働窓口「なんでも相談いらっしゃ〜い」の取り組みについて話した。

 生野区では、行政と福祉団体、民間団体、民族団体などを含む地域住民が連携し、地域の実情に合った福祉行動計画を策定。高齢者、子ども、障がい者、女性、在日韓国朝鮮人・外国籍住民の5つの作業部会も立ち上げられた。それにより、住民が困っている問題を把握し、誰もが生活、法律、福祉などに関する地域の情報を知り気軽に相談できる窓口を、行政と民間が共同で開設することにより、生活問題の解決に貢献してきた。「在日韓国朝鮮人・外国籍住民推進チーム」は、無年金問題の要請活動など独自に活動している。

成基香さん

 文鐘聲さんは、「在日コリアンが住み良い地域は当然、日本人や子ども、高齢者が住み良い地域でもある。行政、社会福祉協議会、地域の福祉施設などの社会資源と協働してやっていこう」と提言した。

 成基香さんは、同胞障がい者たちの音楽サークル「Tutti」の活動経験を語った。

 「Tutti」は「同胞社会の中での居場所作り」「同胞障がい者の存在を知る、理解する」「ボランティアの育成」を目的に、2002年4月から活動を始めた。「Tutti」の地道な活動によって、同胞社会における同胞障がい者についての認識と理解が深まった。当事者や家族たちは「同胞社会に自分の居場所がある」「自分が同胞社会の一員である」と希望を抱くようになった。当初は4人の当事者、12人の支援者で始めたが、今では登録者が17人に増え、一人につき3、4人が手厚く対応できるほど支援者も増えた。

 成基香さんは「『Tutti』のボランティアの中心は朝鮮大学校の学生たち。卒業生たちはさまざまな職業に従事し、地域で活躍している。地域の要求に応じて活用すれば福祉活動をより活性化できるだろう」と述べた。また、同胞障がい者についての把握、障がいに対する知識の共有、家族の支援など有益な情報を交換するネットワークを構築できればと呼びかけた。

張和詠さん

 張和詠さんは、NPO法人コリアンネットあいちのボランティアネットワーク「ポラムティア」の可能性と展望について話した。

 「ポラムティア」はボランティア活動の共有、ネットワーク化、資質向上、人材の開拓と育成、日本社会への発信などを目的に、2007年2月に結成された。名称は「ポラム(生きがい)」と「ボランティア」を掛け合わせた。朝鮮学校での保健教育支援、日本学校に通うコリアン児童のための遊びの広場開催、高齢同胞のためのレクリエーション提供、学習交流会開催などを行っている。現在登録されている「ポラムティア」スタッフは100人を超えた。そのうち62人は朝高生、朝高卒業生を中心とした10、20代で、80歳のスタッフ、日本人もいる。「ポラムティア」事業は公益信託「あいちモリコロ基金」の助成事業に指定されており、展開期活動助成を09年度に続き10年度も受けることが決まった。今年は1世同胞が子どもたちに在日朝鮮人の歴史や文化を伝える活動を始める。

各地の活動経験が紹介されたシンポジウム

 張和詠さんは、「ポラムティアは今後、老、壮、青合同で障がい者、高齢者への自立支援活動、子育て支援活動を行い、支えあう地域社会、共生社会を構築するために貢献していくだろう」と述べた。

 シンポジウムでは京都の外国人高齢者・障がい者生活支援ネットワーク「モア」の活動、西東京の病児保育の活動も紹介された。

 金静寅さんは「既存の制度についての情報を同胞個々人に提供し活用していく過程で、地域行政との協調、住民の理解、交流が始まる。これこそ、われわれが福祉について考え、実践するうえで重要な経験になるだろう」と述べた。(文=李泰鎬、写真=張慧純記者)

[朝鮮新報 2010.3.29]