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マンネの千円札

 日本中を巻き込んだ不況の波はわが家にも容赦なくやって来た。自営で土木業を営むナムピョン(夫)の会社の打撃は予想外に大きく、家庭の経済状況も大きく変化した。

 三人の娘たちは、初級部、高級部、大学に通っていて教育費の負担は重く、10年前に新築した家のローンも先が長い。

 今まで、心配しなくて済んでいた事柄が一気に目の前に山積みされたのだ。私たち夫婦の会話にも、ゆとりがなくなり、時には声を荒げることもあった。

 そんな親の姿が子どもたちに、どんな風に映るのだろうかと考える余裕さえないほどだった。

 ある日の朝、登校前にマンネ(末っ子)が私に手紙をくれた。スクールバスを見送り、その手紙の封を開けた途端、私は固まってしまった。

 四つ折りにされた千円札が手紙と一緒に入っていたのだ。

 「オンマ、アッパと仲良くしてね。ソンスンはコンブ(勉強)もソジョ(部活動)もがんばるから。このお金、使ってね」

 手紙を読んだ私はその場に座り込んでしまった。

 10歳にもならない幼い娘の心を傷つけていたのだ−他でもない私たち親が…。 娘たちは、仲の良い今まで通りの家庭を望んでいるだけなのだ。

 私には親から譲り受けた健康な体と、大切な3人の娘という大きな宝物がある。

 これくらいのことは乗り越えられる!

 私の財布の中には今も、マンネからもらった千円札が大事にしまってある。(孫美仙、パート事務員)

[朝鮮新報 2009.9.11]