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「夏の魔力」

 夏は不思議なパワーをもたらす。

 家ではいっさい料理をしない父親たちが、コック紛いの腕前を披露したり、舞台に上がった口下手の分会長も、立派にMCをこなしたりする。そして金儲けの下手な私も、この日ばかりは凄腕の商売人に変身するのだ。

 夏の風物詩! 「同胞夜祭り」。

 各地のウリハッキョでも、よく見られる光景であろう。

 会場となるハッキョは、今年も老若男女で溢れ返った。この地域の風物詩でもある東京・板橋の花火大会などそっちのけで、地域の同胞や近隣の日本人もたくさん集まって来た。

 ウリハッキョの屋台の品数と味付けは先輩のオモニたちから代々受け継がれてきたもので、名物のドジョウ汁を買いに鍋を持って並ぶ客もいる。それほどウリハッキョの夜祭りは、ちょっと有名なのである。

 主力(縁の下の力持ち?)のオモニたちのパワーは凄まじく、この日のために何十というメニューを考案、仕入れ、調理…と、パートも休み、腕まくりで朝から格闘する姿はたくましい。私もここ十年は、夜空の花火どころではない。

 それにしても不況の最中、へこんだ光景など微塵も感じさせない。ここは果たして、夏の魔力の砦なのだろうか。

 今日は派手やかな「屋台村」と化した、東京第3のちっぽけな運動場で、明日はまた子どもたちがサッカーボールを追いかける。そう、未来のことを考える、親として同胞としての愛校心。それこそが暑い夏に勝る「熱い魔力」の正体ではなかろうか。(梁清美、主婦)

[朝鮮新報 2009.8.21]