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恩師の思い出

 2、3日前のことは忘れて思い出せないのに、20年や30年前の出来事を鮮明に思い出すことはないだろうか?

 先日、テレビで小学校の恩師との対面シーンを観て、呼び起された記憶がある。初級部1年の担任の朴先生との思い出である。もう、40年も前のことにるが、幼い私たちに、こうおっしゃった。

 「あなたたちが大人になって、先生がおばあちゃんになっても、一人ひとりの名前も顔も絶対に忘れる事はありません」

 純真無垢な、あの頃の私は子どもたちへの深い愛が込められた先生のこの言葉に感動したものだった。

 それから幾歳月が過ぎて―。朝鮮大学校を卒業して、教員になった20数年前、私は、ある会合の席で朴先生を見かけた。

 あれから、ずっと教員でいらしたのだという感激と懐かしさ、そして私を忘れていないだろうかという不安を胸に抱き、ドキドキしながらあいさつしたら、先生は「ミソニ、大きくなったわね」と、私の両手をギュっと握ってくれた。

 あのときの先生の言葉は、やっぱり本当だったのだと不覚にも涙があふれ出た。

 新米だった私は、自分も先生のようにいつまでも教え子の心に残る教員になろうと心にちかったものだった。

 それから私も、受け持った生徒たちに朴先生と同じことを言った。

 初級部から大学まで、立派な先生たちに出会い、それぞれにいろんな思い出があるが、朴先生のそれはとりわけ忘れられないものとなっている。(孫美仙、パート事務員)

[朝鮮新報 2009.8.7]