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オモニの歌

 テレビをつけたら韓流ドラマのとある結婚式の場面。新婦が母親に向かって感謝の気持を込めて涙混じりで歌っていた。曲名ははっきりとわからなかったが、「母の歌」のよう。

 民族性なのか、演技力の高さからなのか、親に対する感謝の気持の表現の仕方はさすがで、見ている私まで感情移入されてしまうほど。

 「母の歌」で思い出されたのが、留学先から帰ってきてほどなく舞台に立たせて頂いた、モンゴル国立歌劇場の専属歌手の方とのコンサート。その際も、彼女は母に対する愛の歌を歌っていた。

 何ともいえない情感たっぷりのその歌は、さすが大地を旅する民族、雄大で朗々と歌い上げる名歌唱は、言葉は通じなくても胸の奥まで伝わってくるものだった。

 私に同行してモンゴルまでやってきて、コンサートを聴いていたわがオモニも、ほかの観客と一緒に目がうるっとしていたのを覚えている。

 普段から素直に「ありがとう」と言える機会を逃すと、あとあと後悔することはよくあるのではないかしら。

 親しい仲だからこそ、いつも心から褒めあったり、一緒に喜んだり。若い時には照れたり、気恥ずかしさがあったものだけど、表現者としてはありのままに表現できるのが一番だと思う今日この頃だ。

 母に対する愛は国を超えるものだと実感し、次の演奏会の方向性を考えていた。次回は今までの感謝の気持ちを込めた「オモニの歌」を歌ってみようかな。(チャン・ヒャンス、東京都在住、歌手)

[朝鮮新報 2009.1.16]