心を外に開いて |
元日から息子が風邪で寝込んだ。 お蔭さまでというのも何だか気がひけるが、そのためにいつもの慌しいお正月が今年は少し様子が違った。 夫の実家からも早々に引き上げて、寝込んでいる息子のかたわらでのんびり読書などして過ごしたのである。 ずいぶん前に買って放り出していたエッセイを読んでいると、こんな一文を見つけた。「人間的な幸福とは、どこまでその人が、自分以外の外の世界に向けて自らを開くことが出来るかどうかに、大きくかかわる。知性において、感受性において、心において、肉体において。開かぬことはただちに、自己閉鎖症につながり、生育も成長もよろこびもないのである」。 年齢を重ねるごとにさまざまな家庭内の問題が持ち上がり、いささか疲れ気味だった昨年。人間をもっとも幸福から遠ざけるもののひとつが「自己憐憫」だと知りつつも、「自分ばかりなぜ?」という思いに取りつかれそうになって縮こまっている自分がいた。この本を読んで、「そうだ、自分を閉じてはいけないんだ」とハッとした。心が外に開かれているときだけ、人間は成長するものなのだ。 50歳を目前にした私の今年のテーマは、寝込んだ息子のおかげ? で、はからずも「心を外に開くこと」に決まった。 心を開きながら、自分のできることを一つひとつやり抜くこと。 もしかしたらそんな日々の中にこそ、思いがけない発見や喜びがついてくるのかもしれない。(李春伊、東京在住、会社員) [朝鮮新報 2009.1.16] |