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101歳−「四時半に起床、虫の声を聴いて」

 考古学者の斎藤忠さんが、今秋101歳になられた。

 今発売中の「文藝春秋」十月号に巻頭エッセーが載っていて、「幸い健康にも恵まれ、しかも毎日勉強を続けている」と意気軒昂に語っておられる。1929年、東京大学文学部国史学科に入学した同級生25人のうち、先生だけがご存命だという。

 今春お目にかかった折にも先生が調査を手がけた開城・高麗寺院の霊通寺にもう一度行ってみたいと話されていた。

 先生の白寿(99)を記念して出版された著書「求法僧の仏跡の研究」はカラー写真100枚、さし絵も200枚を超える600ページにわたる労作。この中には高句麗の仏法僧・玄遊が7世紀にスリランカまでたどった旅の事跡も詳細に報告されている。8世紀、中国(唐)で刊行された書物で確認されたという。つまり、8世紀に中国、インド、イラン、アラビア、シリアなど37カ国を徒歩で巡礼し、大旅行記「往五天竺国伝」を著した新羅の慧超より100年以上も早く高句麗僧が、シルクロードへの旅をしたことになる。

 はるかな歴史に刻まれたこれら先達の偉大な足跡への畏敬の念。これが原動力となって、斎藤さんを意欲的な研究へと駆り立ててやまない。

 健康の源は何かと聞かれた先生の答えはこうだ。「私の一日は、四時半に起床、樹木を通って吹き込む風に朝のすがすがしさを感じ、草叢からの虫の声を聴きながら五時からは机に向かう」「できるだけ旅をし歩いていること」(前書)

 感性を磨き、常に現場を訪ね、考え、丹念に調査し、発見すること。記者としてうかうかしてはいられない。(粉)

[朝鮮新報 2009.10.2]