|
日本の領海内外を問わず自衛隊派遣を可能にする「海賊対処法案」が衆院本会議で可決された4月23日、テレビや新聞は酔っ払って騒ぎを起こしたタレントの逮捕報道一色に染まった。日本の平和憲法が危機に瀕している中、タレントの騒動を事細かに報じる必要があったのか。行き過ぎた家宅捜索や過熱報道がそうした疑問を増幅させた ▼5月に入ると、日本の最初の豚インフルエンザ感染者をめぐる緊急速報が相次いだ。感染が疑われた段階で、あたかも犯罪者を移送するかのように加工された映像が繰り返し流されたことに違和感を覚えた ▼米国では、ブッシュ前政権下の司法省がテロ容疑者に対する過酷な尋問を容認した米中央情報局あての覚書が公開され、責任追及を求める声が挙がっていた。一方、米国とメキシコの間では麻薬・銃器の密売などが絡む国境問題や経済摩擦などで溝が深まっていた。だが、豚インフルエンザ問題で「吹き飛んだ」 ▼過熱報道は新たな問題をも引き起こしている。深刻な経済危機で格差、貧困、失業などの問題が広がるなか、メーデーに欧米各地でデモが予定されていたが、インフルエンザ対策を理由に「封じ込められた」。メキシコと中国は感染者の扱いや発生源をめぐって非難の応酬を繰り広げている ▼当初、感染死亡者数は150人以上と報じられていたが、メキシコ当局は4月末、十数人と下方修正。大半は一般的なインフルエンザだったことが確認された。過熱報道の陰で何が起き、誰が得をしているのか、見極めなければならない。(天) [朝鮮新報 2009.5.11] |