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体育科学研究所のリ・ドンギュ研究員に聞く 潜在力を発揮するとき

 【平壌発=金志永記者】サッカー朝鮮男子代表が2010年W杯南アフリカ大会アジア地区最終予選を突破し、44年ぶりの本大会出場を決めた。体育科学院体育科学研究所研究員のリ・ドンギュさん(72)に予選の評価、本大会の展望などについて聞いた。リさんは、朝鮮で放映される国内外サッカー試合の解説者を長く務める「サッカー評論の第一人者」である。

−最終予選での戦いぶりをどう評価するか。

 勝利の要因は、とりわけメンタル、スピード、テクニック面における「ウリ式主体戦法」を徹底的に具現した部分にある。選手全員が発揮した高い精神力に、監督の指揮が効果的に結合し、チームの特徴にあった戦術を使いこなしたことで経験を積み実力をつけた。GKのレベルが大きく伸び、若手のゴールも多かった。また、本大会出場への社会的な期待と関心は選手らを勝利に力強く導いた。

−印象的な試合は。

熱心に語るリ・ドンギュさん

 最終予選で言うならば、アラブ首長国連邦で行われた第1戦(08年9月6日)での勝利(2−1)は躍進の突破口となった。

 イランでのアウェー戦(第3戦、08年10月15日、1−2で敗戦)は、後半に朝鮮が主導権を握ったことで選手らが実力を確信した。平壌で行われたサウジアラビア戦(09年2月11日、1−0で勝利)はとくに印象深い。予選突破をかけた大事な試合で、朝鮮は相手を圧倒し、選手たちは本大会出場に向けて自信を深めたことだろう。

−在日同胞選手の貢献が大きかった。

 安英学、鄭大世選手が最終予選で核心的な役割を担った。

 現代サッカーにおいて大事なポジションであるMFを安選手が守った。相手チームの攻撃を未然に防ぎ、ボール奪取後のカウンターに転じる基点になった。攻撃と防御の均衡を保つうえで活躍していた。

 鄭大世選手はここ最近、朝鮮ではまれに見ない特出した資質を備えたFW。彼がチームに加わり、スタイルが変わった。得点に絡まない場面でも常に2人のディフェンダーが彼をマークしていた。朝鮮が相手チームに脅威を与えながら試合をできたのは、彼の存在があったからだ。

−朝鮮サッカー界における44年ぶりのW杯出場の意義は。

 「朝鮮民族は本当に強い」。そのような印象を与えたと思う。過去、1966年のイングランド大会でベスト8に進出し、「千里馬朝鮮」の神話が生まれ、アジアの国も世界のサッカー先進国と堂々と戦えるということを証明した。

 今回も予選前にはFIFAランキング127位だった朝鮮がW杯に出場するということで、諸外国は驚いただろうし、国内の幼い選手たちには新たな抱負を与えた。W杯出場は、朝鮮サッカー発展の重要な契機となった。

−国内人民のサッカー熱が高いようだ。

 国内での試合があるたびに、チケットが枯渇している。関心が高くなっているだけでなく、質的な変化もある。人民はこれまで、いち観覧者であったが、今では「12番目の選手」という自覚をもって試合に臨んでいる。代表チームが強くなれば社会的な関心が高まり、見守る人たちの声援が増えると若手も育つ。良い循環である。

−W杯本大会までの課題は。

 良い人材が集まりハイレベルなチームを構成できる瞬間というものがある。鄭大世選手が5年前や5年後に現れていたとしたら、現在のようなチームにはならなかっただろう。ホン・ヨンジョ選手の存在もそうだ。本大会では、闘志と忍耐力、集団力が相手チームよりも勝っていれば勝つことができる。

 集団力がとくに発揮されるディフェンスの組織化は、今後確認していかなければならない。南アフリカに行く23人の選手を選抜するにあたって、特技を持った候補選手を選出しなければならない。

 現在のチーム構成は良いが、ずば抜けた技術をもった選手がさらに数人補充されれば、戦術的な選択の幅を広げることができるだろう。

[朝鮮新報 2009.7.8]