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〈食のはなしM〉 平壌の特産料理

脳卒中予防、記憶細胞保護に効果

 ウリナラの首都・平壌は、政治、経済、文化の中心であるとともに民族料理の発展において重要な位置を占めてきた。平壌周辺は平野が広がり山や森林など豊かな自然に恵まれ、食材も豊富である。穀類、山菜などの野菜類をはじめ平壌の中心を流れるウリナラ6大河川の一つ、大同江には多くの淡水魚が生息し人々の食卓に彩りを添えてきた。

 俗に冷麺、温飯、鯔汁、緑豆チヂミを平壌の「4大料理」と呼ぶ(「朝鮮の特産料理」、平壌出版社)。

 平壌といえば真っ先に平壌冷麺を思い浮かべる。冷麺が有名なのはいうまでもないだろう。平壌冷麺はその麺とスープに特徴があり、栄養的にとても優れている。

 麺の主原料には蕎麦粉を使用する。つなぎとして緑豆粉やジャガイモをはじめでんぷん粉を練りこみ、押し出して麺を作ることであのコシと独特な食感が出る。

 また蕎麦は栄養的にも優れている。

 蕎麦にはビタミンPの一種であるルチンという物質が豊富に含まれている。ルチンは毛細血管を丈夫にし、血圧降下作用による高血圧や脳卒中予防、膵臓機能の活性化、記憶細胞の保護や活性化にも効果があるとされている。そのほか食物繊維やタンパク質、ビタミンB1、B2なども多いが、なかでもビタミンB群は精白米の4倍量を含んでいる。

 冷麺の主原料として使用する蕎麦は、乾燥している荒れた土地でもよく育つため、平安南北道、慈江道をはじめ朝鮮全土で食された。

 冷麺の美味しさを特徴づけるスープは、唐辛子を使用しない酸味の利いたトンチミ(冬沈)というキムチの汁に鶏肉などから採ったダシ汁を合わせたあっさり味が特徴だ。そこへカラシ、酢などを添え自分の好みに合わせて調味するのが冷麺を美味しくいただくコツである。まさに朝鮮民族を代表する麺料理といえよう。

 温飯も平壌では有名な料理の一つだ。在日同胞たちがウリナラを訪問した際、平壌にあるホテルや食堂で、少なくとも一度は食されたのではないだろうか? 白いご飯に鶏肉のダシで作った温かいスープを注ぎ、その上に緑豆チヂミを乗せたシンプルな料理だ。さてこの緑豆チヂミは緑豆を粉にし、さまざまな種類の野菜と豚肉をいれて焼くのだが、その味は格別に美味しいとのことでとりわけ宴の席では欠かせない料理になっている。

 鯔は味にクセがあるので日本ではあまり食されないが、ウリナラではよく食べる淡水魚の一つである。平壌では大事なお客をもてなすときに鯔スープを出すという。それが一種の礼儀であり、その美味しさが朝鮮全土に広がって名物料理になったとの言い伝えがある。

 平壌に姉が住んでいる。次回、祖国を訪問するときは、平壌特産料理をぜひ作ってもらおうと今から心待ちにしている。

 さて、今回が連載最後となった。連載期間は私にとって多くのことを学ぶことができたとても貴重な時間であった。このような機会を与えてくれた編集部の方々、最後までお付き合いしていただいた読者の皆さん、心から感謝いたします。(金貞淑、朝鮮大学校短期学部准教授、栄養学専攻)おわり

[朝鮮新報 2009.12.25]