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広島初中高 特別課外授業 「KANEKO」ライブ

音楽の楽しさ、互いに刺激受け

 10月27日、広島朝鮮初中高級学校で「ウリハッキョ特別課外授業−音楽授業編」が行われた。対象は、同校の中・高級部生たち。

 授業内容は、インディーズバンドのライブ鑑賞だった。そのステージに立ったのは、4人の在日3世で構成された「KANEKO(カネコ)」。日本各地で活動を展開している。

音楽の真髄を

ギター担当のCHUTTIこと鄭宙素さん

 ことの始まりは今年3月。訪れたある公演地で、「KANEKO」と偶然出会ったのだ。メンバーの一部は朝大の卒業生。彼らとは、卒業以来、約10年ぶりの再会であった。しかし、その年数を思わせる違和感などなかった。

 彼らがウリマルで歌を歌い、曲を弾いたりする姿に心を打たれた。心を込めて歌うバンドに強い印象を持ったからだ。

 4月から私は、同校で音楽講師を務めることになった。生徒たちが音楽への親しみや楽しさを感じ、さらに在日朝鮮人として、堂々と生きていける心を育むにはどうすれば良いだろうかと、模索を重ねた。そんな試みの一つが、「KANEKO」をウリハッキョに呼ぼうということだった。

 生の演奏、臨場感を味わったことのない生徒たちを中心に、音楽の真髄をストレートに伝えるにはこれがいいと思い、学校に相談をした結果、いい返事をもらえた。

大盛り上がりの生徒たち

 それから、「KANEKO」にこの話を持ちかけると、「そんなことが自分たちにできるのなら、ぜひやらせてもらいたい」と、こちらも快諾。

 準備をスタートさせたのは5月から。ロックバンドを呼ぶからには、少しでも良い環境でやってほしいと思い、音響業者に掛け合った。日頃からのつきあいもあって、二つ返事で決まった。

 特別課外授業が近づいた頃、全国ツアー中で多忙な日々を過ごしていた「KANEKO」に、生徒たちが知っている歌を歌ってほしいと頼んだ。彼らは、ライブの合間を縫って、練習をしてくれた。授業中に私は少しでも「KANEKO」を知ってもらおうと、CDを流した。反応はさまざまだった。

生徒たちの反応

ライブに先立ちトークショーが設けられた

 課外授業当日、生徒たちや先生の手助けのなか、朝8時から「仕込み」が始まった。

 10時30分、メンバーたちが会場入りした。「生徒たちが、一体どんな反応をするのか心配」という。

 そんな彼らを「生徒たちは、予想以上にいい反応を示すと思うし、ウリハッキョ、ましてや朝鮮大学校を出た『KANEKO』に、かなり興味を持っているよ。だから思いっきり楽しんでほしい」と励ました。

 しかし、そうは言ったものの、正直、私も不安はあった。

 ウリハッキョでロックバンドのライブ、生徒たちの反応、「KANEKO」の不安…。

 そんななか、リハーサルが終わり、準備は整い、生徒たちが体育館に集まった。

 13時20分、幕は上がった。

 メンバーたちが登場すると、喝采とともに黄色い声が飛び交った。

6曲を披露した「KANEKO」

 まずは「KANEKO」をもっと知ってもらおうと、トークショーを開いた。質問コーナーでは、生徒たちからの質問に一つひとつ、すべて答えてくれた。

 ライブが始まると、瞬間に大喝采がわき上がった。生徒たちが全員ノリノリの中、彼らは全6曲を歌いきった。

 すると、今度はアンコールの嵐。「KANEKO」は生徒たちのために、「ハナ」を歌ってくれた。次第に生徒たちも歌を口ずさみ始め、大合唱が起きた。

 こうして、90分の特別課外授業はあっという間に終了した。

 「KANEKO」のリーダー・金逸樹氏は、「私たちの音楽をこれほど多くの生徒たちが聴いて喜んでいる姿を見て、むしろ私たちが力をもらった。『異端児』だった自分が、ウリハッキョでライブをやるなんて考えもしなかったが、今回の全国ツアーの中で一番楽しかった。また歌いたい」と熱く語った。

 ウリハッキョを卒業し、自力でこの日を迎えた「KANEKO」は、生徒たちに楽しいひと時を提供してくれたうえ、「やればできる」という強い気持ちを植えつけてくれた。

 今回の有意義な「授業」をきっかけに、音楽の授業では集中力がいつにも増して高まる一方、自ら歌や楽器を演奏したいという生徒たちが増えたことは言うまでもない。(河弘哲、広島朝鮮歌舞団団長)

[朝鮮新報 2009.11.18]