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〈本の紹介〉 私が見た戦争

反戦を強烈に訴える

 殺し殺される兵士たち、犠牲になる市民と子ども、続く負の遺産−世界を取材してきた著者が、今あえてその仕事を集大成したのが本書。ベトナム戦争はもちろん、未発表写真の多いボスニア、ソマリア、沖縄の基地と日本の戦跡…。

 石川さんがベトナム戦争を取材したのは26歳。以来報道カメラマンとしての人生を歩むことになるが、常にベトナムの体験が支えとなった。

 1965年8月のトンキン湾事件以降、サイゴン陥落、戦争終結までずっとベトナム戦争を現場で取材。その後もベトナムに通い、枯葉剤、不発弾などによる戦争の後遺症の取材を続けてきた。そのときのことを振り返って、石川さんはこう述懐する。

 「私はとても臆病です。それでもベトナム戦争を取材している時は、若かったので戦場へいく行動力がありました。歳を重ねるにしたがって恐怖感が増してきました。重い腰をあげてボスニアを取材した時は、ベトナムへ初めて行った日から三〇年がすぎて五六歳になっていました。サラエボの大通りを狙撃におびえて走りながら、人間はどうして、いつの時代になっても戦争をくり返すのだろうと思いました」

ソマリアの難民キャンプ。人口800万人のうち100万人が難民だという(石川文洋氏撮影)

 繰り返された愚かな戦争。そのほとんどの戦場に立ち、残酷な戦争の実態を告発し続けた石川さんの思いが、全編に溢れている。

 「戦争は、いろんな夢や希望を持った子どもたちの命を奪います。私たちは、子どもたちが平和の中で成長していける環境をつくる責任があると思います」と。

 本書には、北側から見た軍事境界線、北側から見た板門店など朝鮮半島の軍事的緊張を写しだす数点の写真も収録されている。

 日本を「戦争のできる国」にしようとする動きの中、240枚以上の写真が反戦を強烈に訴える。オールカラー。 (石川文洋著、新日本出版社、2800円+税、TEL 03・3423・8402)(粉)

[朝鮮新報 2009.10.26]