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〈本の紹介〉 風と石と菜の花と

4.3の精神、統一に注ぐ

 「風と石と菜の花と」を読み終えて私の心に残ったのは、観光客が訪れる美しいリゾート島ではなく、この地で死して生き抜き、死して生き続ける道民の魂が風を呼び、石を鳴らし、海の波が激しく押し寄せる痛恨の風景であった。

 済州島最大の悲劇である4.3事件をモチーフにした詩が圧倒的に多いのは、訳者大村益夫さんがまさにこの詩集を編んだネライであり、歴史の真実を明らかにし、詩がどのように向き合い、関わるべきかを問うている。そして、私たちにかあさんの肉の細胞として とうさんの血脈として 震えながら…最後までみつめて=i「4月の意味」)いくことをしっかりと求めている。

 「詩と闘いとは/もはや 朝鮮においては/区別出来ず/闘いと詩とは/もはや 朝鮮においては/二つのものではない」とある詩人は詠っている。19人の詩人たちによる71の作品には、耐えることができないほど曲がっても/絶対に崩れない=i「石工のために」)歴史意識に根ざした詩精神があふれていた。

 4.3事件の惨劇をリアルに描いた「パクソンネでの死体探し」、あの日の悪夢が今もって人々を脅かす「ナクソン洞」、そして特に母の60周忌の命日にどこかに引っ張られていった兄に会いたいと切実に訴える「いまは一緒でなければ」には胸を熱くし涙した。

 詩「揺れについて」を書いた許栄善は「4.3の抵抗精神は…この時代、地球上唯一の分断国家の統一のために捧げられるということを信じている」と語っている。

 私はこの本を通じて済州の風は/わたしの命の近くに=i「済州の風」)いることを実感した。

 「済州道文学は、もっとも人間的であり、もっとも韓国的であり、もっとも世界文学たりうるのではないかと思う」と断言する訳者の生涯変わらぬ姿勢と誠実さは、菜の花のようにいつまでもそよいでいる。(木村益夫 編訳、新幹社、2000円+税、TEL 03・5689・4070)(李芳世 詩人)

[朝鮮新報 2009.10.16]