朝鮮家庭料理講座 埼玉・川口市教育委員会が主催 「食」を通じ風習や文化知る |
初めての食材に興味津々 「ヤンニョムって万能ダレ」
「朝鮮家庭料理講座」が9月6、13、19、26日の4回にわたり、埼玉県川口市の新郷公民会館で行われた。主催したのは、川口市教育委員会。 講師として招かれたのは、1回目は李浩善さん(72)と李さんの息子のつれあいの李庸実さん(38)。2回目は李春枝さん(60)。3、4回目は鄭蓮姫さん(62)の4人だ。 参加者は、公募によって選ばれた川口市在住の30〜70代の女性20人。応募は、定員を上回るほどの人気ぶりだった。 「市民のニーズに合った講座を開かなければ、人は集まらない。朝鮮文化や歴史に興味を寄せる近年のブームを背景に、朝鮮料理の人気が高いので、『これだ!』とヒントを得た」と話すのは講座事務担当の野崎環さん。 その後、女性同盟南部支部の李栄淑委員長に話を持ちかけ、講座の準備に取り組んできた。李委員長は、全講座に足を運び、助手代わりとなり手伝った。
「無駄がない」に関心
取材に訪れた日は、川口市内で朝鮮家庭料理店を経営する鄭蓮姫さんが講師を務めた3回目。「アンニョンハセヨ!(こんにちは)」と朝鮮語のあいさつから講座は始まった。 この日のメニューは、ピビンバと大豆もやしのスープ、コチュジャン(即席)、ニラとニンジンのチヂミの4品。一人ひとりにレシピが配られ、鄭蓮姫さんが簡単な説明をした。 5組に分かれて調理開始。まずはコチュジャン作りから。味噌や粉唐辛子などの材料を鍋に入れ、ゆっくりじっくりとかき回す。 味見をしては「おいしい!」と顔をほころばす参加者たち。「以前教わったヤンニョム(薬味)もそうだし、これも万能ダレね」などと会話もはずむ。 同時に、大豆もやしとぜんまい、ほうれん草のナムルに、大根とニンジンのセンチェ(生菜)などピビンバ用の具をこしらえる。「お店で食べる料理に目新しいものを」という鄭さんの提案で、変り種としてトラジ(桔梗の根)のセンチェをトッピング。トラジを初めて口にする人たちも「歯ごたえも味付けもバッチリ」と笑顔を見せる。
なかでも参加者たちが感心していたのは、大豆もやしのスープ。ナムルのもやしのゆで汁をこぼさず、そこに塩で味を調えて作る過程に「無駄がない」とうなずいていた。
チヂミは、焼き方にコツがいる。生地をフライパンに流し入れ、平らにのばし火が通ったら裏返し、フライ返しなどでギュッギュッと押して薄くする。 鄭さんが、フライ返しを使わずに生地をひっくり返すと「すごーい」の声。つづけてみんなも、負けじとチャレンジ。 焼いたり、茹でたり、炒めたり…室内はゴマ油の香ばしい香りに包まれていた。 鄭さんと李委員長は、終始各グループを回りながら、手ほどきをした。 さすが主婦たち。手さばきがよく、各々の力を合わせ、初めての調理にも関わらず1時間半後には、テーブルに料理が並んだ。 子どもたちにも好評
「モクケッスムニダ!(いただきます)」−にぎやかな試食会が始まった。 その間も参加者たちは、「ピビンバとはどういう意味?」「トラジはどこで買えるの?」「コチュジャンの他の用途を教えて」など朝鮮料理に興味津々の様子。 鄭さんが器に余ったコチュジャンに酢や砂糖を加え、チョジャン(酢味噌)を作ると、みな首を伸ばし興味深げに作り方に聞き入っていた。 試食後、参加者たちは「お店でよく食べるピビンバが、このように一つひとつ丁寧に作られているから、こんなにうま味が詰まっているんだなと思った」「スーパーで買っていたコチュジャンがこんなに簡単に作れるなんて」「家では失敗してしまうチヂミを初めてちゃんと焼けた」などと楽しそうに感想を述べていた。
石井幸子さん(60)は、「ハングルを独学していて、料理にも興味を持った。家でも作れる家庭料理を教わってうれしい。朝鮮の文化や風習を知るきっかけになった」と話した。
30代の女性は「朝鮮料理を作るのは難しいと思っていたけれど、家にある材料で簡単にできるのでうれしい。前回教わったヤンニョムを家で作ったら、子どもたちも喜んで食べていた。また、風習の違いも知ることができ、『食』を通じて理解を深める一歩になった」と語った。 また、他の回では、薬飯やチャプチェ、トックなど定番の朝鮮家庭料理が紹介され、好評だった。 鄭さんは、「みなさん主婦だけあって、手際よく飲み込みも早かった。無事みんなでおいしく食べられて良かった。今日は朝鮮料理だったが、これを機に、朝・日の友好の気運を高め、相互理解の輪が広がっていけば」と話した。(姜裕香記者) [朝鮮新報 2009.10.7] |