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〈食のはなしG〉 旬の魅力

四季折々の美味しい食材

 旬とは、食材が他の時期よりも新鮮でおいしく食べられることを指す。また収穫量が多く、店頭を賑わし、値段も安い。植物や果実でたとえて言うと色、形、香りすべてが最高の時である。動物たちはこの鮮やかな色と香りにひきよせられるようにそこへ集まる。とかく植物や果実は色や香りでアピールし、動物たちに食べてもらって種子をさまざまな所に運んでもらい子孫を残す。そこには植物たちの生殖戦略が潜んでいるのだ。

 魚介類では産卵期前が旬に値する。産卵期は体を張って卵を守り栄養を常に与えなくてはいけない。そのため魚介類は、多くのエネルギーを効率のいい「脂」として蓄えている。すなわち、旬の魚は脂がのっているためおいしいのだ。まさに旬とは、動植物にとって子孫を次世代に確実に残すための重要な時期に値するといえよう。

●秋の旬な食材

野菜・果物

  ビタミンCがとても豊富、老化やガン予防に効果があると言われる。カリウムも多いので高血圧予防にも。

 サツマイモ ビタミンC、E食物繊維が豊富、消化器系の働きを高める。

 春菊 カロチン・ビタミンCが豊富、夏の紫外線による肌荒れを整えたり、ガン予防などに効果があるという。独特の香り成分は自律神経に作用し胃腸の働きを高め痰や咳を鎮める効果もある。

 きのこ類 食物繊維が豊富。また、紫外線に当てるとエルゴステロールという物質が活性型ビタミンDに変わりカルシウムの吸収を高めるので、調理前に2〜3時間日光に当てるとよい。

魚類

 サンマ EPA、DHAを多く含み血栓予防、脳の学習能力アップに良いと言われる。胃腸を温め、疲労回復効果あり。

 サバ サンマと同じくEPA、DHAを含む。たんぱく質、脂肪、ミネラル、ビタミンがバランスよく含まれている。腐敗が早いため新鮮なものを。

 サケ 必須アミノ酸を多く含む良質のタンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルが豊富。とくにビタミン類が豊富で免疫力を高めたり粘膜や皮膚の血行を良くする働きがあり、寒くなる季節に最適。中でもビタミンB群は、食欲の消化促進、口内炎、肌荒れ、貧血などの予防にも役立つという。

 さらに旬の期間は、気候などに対しさまざまな変化に順応する機能も備えている。たとえば暑い土地にできる植物は、暑さ対策(暑さに順応できる機能)を持っている。なかでもトマトは、豊富な水分と赤い色素リコピンの抗酸化力により紫外線から種を保護している。リコピンは、紫外線の影響で増加する活性酸素を抑え肌層にあるコラーゲンの変質を防ぐ機能がある。トマトをはじめスイカや唐辛子のカプサイシンも強い抗酸化力を持ち、私たちの体を紫外線から守ってくれるのだ。

 大根や柑橘類をはじめ冬が旬の植物は、ビタミンCを豊富に含み身体をあたためてくれる作用をもっており、寒い冬を乗り越えられる。春になると身体は活発になる準備を始めるので、細胞を活性化する栄養素が必要になる。春野菜に多い灰汁やえぐみはぜんまいやわらびなどの山菜類にとくに多く、それらが細胞の活性化や冬の間に溜め込んだ老廃物を分解、排泄するために必要なものとなる。

 さて食欲の秋、実りの秋が到来した。秋は夏の暑さで弱った体を整え、冬の寒さに備えるための準備期間といえよう。秋の食材をいくつか並べてみた(表参照)。このように旬の食べ物とは一番おいしい時期だけをいうのではなく、私たち人間の身体がその時期に欲している栄養素をたくさんもっている貴重な食材だといえる。味覚と生理はとても深い関係があるのだ。

 もともと自然の中で暮らしてきた人間は「身土不二」といい、その土地で採れた旬のものを積極的に食べて生活をすることによってその土地と一体化し、自然の流れにそってより健康的で情緒豊かな生活を行えると言われている。いわゆる季節に採れる食材を料理し食するということは、人間が自然に生きてゆくうえでもっとも理にかなった方法であろう。

 このような考え方は季節性のはっきりしている朝鮮でも郷土料理、名節食、時食の風習として残っている。旬の動植物を食材として味わい、自らの細胞の活性化と生命維持につなげられることに心から感謝したい。

 今はいつでもどこでも手に入り食することが可能となったためか、昔のように旬を感じることが難しくなってきた。だからこそ「期間限定」で味わえる旬の魅力をもっと積極的に楽しみたいものだ。(金貞淑、朝鮮大学校短期学部准教授、栄養学専攻)

[朝鮮新報 2009.9.25]