〈こどもの本だな〉 子どもと一緒に絵本を読もう! |
朝鮮の昔話、エコロジー絵本など 草むらからはコオロギの鳴き声が聞こえ、朝夕秋の気配が感じられるようになった。 食欲の秋、運動の秋、芸術の秋、そして読書の秋。 今回紹介するのは、朝鮮の楽しい昔話と痛快な民話、自然のしくみを教えてくれるエコロジー絵本、姉弟愛を感じさせるゆかいな物語の4冊。 ここで紹介する本は、一般書店のほか、コリアブックセンターでも注文できる。 問い合わせ=コリアブックセンター(TEL 03・6820・0111、FAX 03・3813・7522、Eメール=order@krbook.net)。
「こかげにごろり」−地主と百しょうのユニークな対決
山をこえた山里に、それはのどかな村があった。 百しょう(姓)たちはみんな働き者で、助け合いながら仲良くくらしていた。でも、ひとつだけ困ったことがあった。 百しょうたちに土地をかしている地主がとても意地悪で欲ばり、お米や麦などをどっさり横取りするのだ…。 昔、朝鮮の百しょうたちは地主からの取り立てに苦しんでいた。 この物語は、百しょうたちの地主をやっつけたいというねがいから生まれたユニークな昔ばなし。 百しょうたちが地主から買った木のかげがどんどん伸びていき、まるで生きていて意思があるように感じられる。 登場人物の服そうや朝鮮の家屋、畑のようす、しょいこを背負う男性やかごを頭に乗せて運ぶ女性、子どもの遊び、祭事の風景など、朝鮮独特の風俗が細かく描かれていて見応えがある。 意地悪な地主をとっちめる百しょうたちの活躍は痛快そのもの。 アジア・南米・アフリカなどで語り継がれてきた昔話の絵本。
「ふしぎな しろねずみ」−小さなねずみの大きな贈り物
しとしとと雨のふる日のできごとだ。 一匹のしろねずみが、昼寝をしていたおじいさんの鼻の穴を寝息とともに出たり入ったりしていた。 しろねずみは、おじいさんのほおを伝っておりてくると、雨のなかをあそびに外へ出て行った。 それを見ていたおばあさんが、そっと後をついていくと、しろねずみは大きな川のような水たまりをわたって、途中で牛のふんをおいしそうに食べ、通りをぬけて、田んぼをすぎ、やがて石がきの穴へと入っていった。 その一部始終を夢のなかで見ていたというおじいさん。 おばあさんとおじいさんは手を取って、しろねずみの走っていった道をもう一度たどって行った。 すると、そこには思いがけない幸運が待っていた! ユニークな展開の朝鮮の昔話を、ボローニャブックフェア・ラガッツィ賞を受賞した画家がやわらかい感性で描いた。 深い青色につつまれた雨の場面と、終盤の明るい黄色の背景との対比がみごと。 読み聞かせにも、おすすめの楽しい一冊。
「あめ じょあじょあ」−雨はどうして降るのかな?
雨が降る。 ぽつん、ぽつん、ぽたぽたぽた…。 屋根を打ち、といを流れ、ガラス窓をつたって雨は落ちる。 雨は木や草を湿らせて、やがて地面にしみこんでいく。 雨はどうして降るのだろう? 山や野や町に降った雨は、小さな流れから川へ、そして川から大きな海へと流れこむ。 畑の水も、川の水も、海の水も、雨はそのうち水蒸気になって空にのぼり、雲になってまた雨になって降ってくる。 働く人の汗だって、雨のしずくになるのかもしれない。 めぐりめぐる水の循環を、「とべ バッタ」などで知られる田島征三さんのユーモアたっぷりのおおらかな絵で描いた科学絵本。 歯切れの良いリズミカルな訳文も声を出して読むのに適している。 「じょあじょあ」は朝鮮語で雨が勢いよく降る様子を表す言葉。日本語の「じゃあじゃあ」に似た響きをもっている。 「あめ じょあじょあ」には、大きな傘をさして雨の中を元気に歩く子どもの絵がぴったりだ。 「おとうと バーゲンします!」−大嫌いだけど、大好き!?
いつもいっしょにいる弟は嫌なところがいっぱいだ。 わがままな弟に腹をたてたお姉ちゃんのチャンイは、市場に弟を売りに行くことにした。 「だって、弟ったら本当ににくらしいのよ。口ごたえするし、つげ口するし、欲張りで、食いしん坊なんだもの」 おもちゃ屋のお姉さん、花屋のおじさん、パン屋のおばさん、ともだちのスニに弟を売り込んでみるものの、みんなの反応はイマイチだ。 親の前ではいい子ぶってて、泣き虫で、食いしん坊の弟なんて、誰も欲しがらない。いったい、どうしたら売れるんだろう…? そこでチャンイは、弟の良いところをみんなにおしえてあげることにした。 「うちの弟は歌が上手だし、お姫さまごっこのとき王子さまの役ができるし、おりがみでステキな花を作れるし、お話やダンスだってできるのよ。それから、お留守番のときいっしょにいると怖くないのよ」 するとみんなは弟がほしいと言いだして…。姉と弟の微妙な関係を描いた、思わず笑ってしまう話。 [朝鮮新報 2009.9.25] |