top_rogo.gif (16396 bytes)

〈朝鮮と日本の詩人-104-〉 犬塚尭

韓国から来た陶工たち

 窯の中では火が舞い踊る
 神々の火が焼物めぐって
 腕ふり上げて脚踏んで
 この世に狂えと舞い踊る
 わが身ゆだねる陶磁器は
 肌をゆだねる愛人のようだ
(3連18行略)
 これこそヒゼンイマリの磁器だ
 紅毛の人も嘆声上げる
 イマリヤパン不思議国
 川沿い商家のさんざめき
 河渡る三味の音も冴えて
 いまりまだらやションガイナー

 娘は紗のように軽く舞い舞い
 韓国から来た陶工たちは
 無名に墓で眠っている
 秘窯伊万里のいや栄え
 白金黄金いや栄え
 四百余年を眠っている

 引用した詩は、全8部で構成された、40連124行の長詩のうち7連からなる第5部「伊万里の焼物」のうちの第1連と5、6連の全部である。伊万里焼は「韓国から来た陶工」つまり日本に拉致された多くの陶工たちの手になる、佐賀県の有田一帯で焼かれた磁器である。伊万里港は中世倭寇の根拠地であったが、江戸時代には主として有田焼の輸出港として栄えた。

 詩人は、朝鮮人陶工たちの、望郷の念抑えがたい、ノスタルジアの芸術ともいえる磁器の美を、「肌をゆだねる愛人のようだ」と、日本人なりに賛仰している。「紅毛の人も嘆声上げる」というように、ヨーロッパ諸国で珍重された伊万里焼が、実質的には朝鮮の磁器であったことを、欧州でどれだけ知られていたのか、筆者は寡聞にして知るところではない。

 1924年に旧満州で生まれた犬塚尭は、旧制一高から学徒兵となり、敗戦後東大を卒業して朝日新聞社に入社した。69年に詩集「南極」でH氏賞受賞。07年に「犬塚尭全詩集」(思潮社)を上梓した。右の詩はここから選んだ。(卞宰洙 文芸評論家)

[朝鮮新報 2009.9.14]