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くらしの周辺−夏の終わりに思う

 夏バテ解消にはやはり朝鮮料理だろう。唐辛子やニンニクを食材として用いた祖先の知恵には畏敬の念をおぼえる。味もさることながら栄養面においてもスタミナ抜群ということは周知のとおりだ。

 私にとって、格別の一品は何といってもわかめスープだ。いや、深い意味合いからあえて「ミヨック(わかめスープ)」と表現したい。

 自身の誕生日が近づくにつれ、いつも思い出すのが「ミヨック」だからだ。

 裕福といえない家庭で育ったせいか、誕生日プレゼントといった類のものはもらったこともなければ親にねだったこともない。しかし、オモニは決まってその日になると朝から鶏1羽をまるごと煮込み、丹念に「ミヨック」を作ってくれた。ご馳走やケーキが食卓を賑わすことはなかったが、オモニは家族一人ひとりにいつも決まって同じことをしてくれた。

 低学年の時だったか、どうして自分の誕生日は夏休みなの、9月に産んでくれたらよかったのに!とオモニを悩ませたことがあった。クラスのみんなは普通の日だから得をする、それにくらべ8月30日は誰にも構ってもらえない大損の日だと屁理屈をならべ、長時間かけて作ったオモニのスープを飲まなかった。

 親になった今、8月を迎える度に自分を産んでくれたオモニに感謝でいっぱいになる。誕生日とは自身を祝うのではなく、親への感謝をすべき大切な日だ。

 遠く九州の地に暮らすオモニの愛情がどんなに深いものか、今では少し理解できるようになった。 倹しい暮らしではあったが、民族の心だけはしっかりと授けてもらったような気がする。(李圭学、教員)

[朝鮮新報 2009.9.4]