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〈朝鮮と日本の詩人-100-〉 柾木恭介

ナパーム弾で焼野原

 五月の空に戻ってきた 歌声を飾ろうと
 花園を訪ねたあなたを 棍棒で追い出し
 植民地支配の武器として名高い
 スミス・ウィルソン式1917年型拳銃のごつい弾を浴びせたのはだれか

 ナパーム弾に焼き払われた朝鮮の野原に
 花がないと泣いたあなたを
 やっと見つけた川辺で
 花束を作っていたあなたを
 こっそり後から
 小川に突き落としたのはだれか

 白百合のように流れていった
 あなたを運んだ冷たい水を
 ハルビン近郊の平房にあった
 ヒロヒトの軍隊第七三一部隊と
 ワシントン付近 デトリック・キャンプの
 細菌で汚したのはだれか

 「オフェリヤの花束」の全文である。3つの連のすべてに「あなた」という詩語がみえるが、これはいうまでもなく「朝鮮」のメタフォーである。技巧的にみると、各連の終行がいずれも「だれか」で終り、それが前行の「のは」という詩語と共鳴している。それによって「だれ」、つまり米帝国主義に対する断罪が響いている。「花園」「花」「花束」「白百合」4語が、この詩が内包する堅固な政治性に叙情性を付与している。最終連は、細菌戦の実験さえおこなわれた朝鮮侵略戦争が、米日一体となって戦われたことを明示している。

 柾木恭介は1922年に中国・大連に生まれ萩原朔太郎、小熊秀雄に傾倒し、戦後間もなく詩誌「列島」に加わり、時局的テーマの作品を好んで書いた。詩集に「ぱらぱらー今昔夢幻」があり、この詩はここから選んだ。(卞宰洙 文芸評論家)

[朝鮮新報 2009.8.3]