〈朝鮮と日本の詩人-100-〉 柾木恭介 |
ナパーム弾で焼野原 五月の空に戻ってきた 歌声を飾ろうと ナパーム弾に焼き払われた朝鮮の野原に 白百合のように流れていった 「オフェリヤの花束」の全文である。3つの連のすべてに「あなた」という詩語がみえるが、これはいうまでもなく「朝鮮」のメタフォーである。技巧的にみると、各連の終行がいずれも「だれか」で終り、それが前行の「のは」という詩語と共鳴している。それによって「だれ」、つまり米帝国主義に対する断罪が響いている。「花園」「花」「花束」「白百合」4語が、この詩が内包する堅固な政治性に叙情性を付与している。最終連は、細菌戦の実験さえおこなわれた朝鮮侵略戦争が、米日一体となって戦われたことを明示している。 柾木恭介は1922年に中国・大連に生まれ萩原朔太郎、小熊秀雄に傾倒し、戦後間もなく詩誌「列島」に加わり、時局的テーマの作品を好んで書いた。詩集に「ぱらぱらー今昔夢幻」があり、この詩はここから選んだ。(卞宰洙 文芸評論家) [朝鮮新報 2009.8.3] |