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〈本の紹介〉 収奪された大地

凄まじい略奪のメカニズム

 米国を帝国主義と呼んではばからない、ベネズエラのチャベス大統領。その彼が、オバマ大統領に「この本はわれらがラテンアメリカの歴史における記念碑的存在だ」として、本書をプレゼントした。このニュースが全世界に伝えられ、それまでアマゾン・ドットコムの売れ行きランキングでは5万位以下だったのが、数日後には、2位にまで一気に上昇したという。

 本書の原題(ラテンアメリカの切り開かれた血管)は、ウルグアイ出身の著名なジャーナリスト、E・ガレアーノが1971年に書き上げた大著。70年代、ラテンアメリカを席巻した親米反共軍事クーデターにより、ウルグアイ、アルゼンチン、チリでは発禁、著者はアルゼンチン軍の「死の部隊」の暗殺候補者リストに載り、亡命を繰り返した。

 コロンブスの新大陸「発見」以来500年の歴史は闇そのものだ。「飢えた豚のように黄金を渇望していた」スペイン人は、入植当初から銃・剣・細菌で原住民を殺りくし、アステカ、インカ、マヤなどの優れた文明を完全に消滅させた。侵略、虐殺、抑圧、プランテーションや鉱山での死の重労働など、まさに収奪そのものの歴史であり、主役はスペイン、ポルトガル、オランダだったが、後に英米、とくに米国に取って代わられたにすぎない。

 収奪によるかつてのヨーロッパの繁栄とは対極にこの地域では資本流失により経済の従属と周辺化が進み、わずかに残った資本も浪費され、蓄積されることはなかった。「この全過程は、たとえて言えば、ある一式の血管から別の血管にポンプで血液を注入する過程だった。すなわち今日の開発の進んだ国々は開発を進め、他方、開発の遅れている国々は低開発を開発していった」と著者は指摘する。

 すさまじい略奪の歴史を提供するとともに、現在のメカニズムがどのように機能しているか明らかにすることを目的とする本書は、時間と空間の両軸を巧みに織り交ぜ、緻密な論理と豊富な資料、文学的表現などを駆使して読む者を圧倒する。

 38年前に書かれた本書が、米国も含めてラテンアメリカを理解するうえで今も必読書と呼ばれ、貧しい中南米の人々にとってはバイブル的価値を持つといわれるのも頷ける。ラテンアメリカという第三世界を知れば世界の真の姿が見えてくる。(E・ガレアーノ著、藤原書店、TEL 03・5272・0301、4800円+税)(崔鐘旭 ジャーナリスト)

[朝鮮新報 2009.6.19]