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若きアーティストたち(65)

相愛大学学生 柳響麗さん

 「さまざまな国の文化に触れ、音楽で得られる感動や喜びを多くの人に与えたい。また音楽を通じ、世界の人たちをつなげられれば」―ユネスコ国際民間文化芸術交流協会の音楽親善大使として活躍する柳さんは、現在、相愛大学音楽学部でヴァイオリンを専攻している。

 音楽家の父と母の間に生まれ、常に音楽がある家庭の中で育った。3歳でヴァイオリンを手に取り、初級部3年生までは父に教わったという。初4からは専門家に指導を受け、本格的にレッスンをはじめた。

 「休みと言えば、学校の休憩時間くらいだったかな」と笑うが、学校帰りや土日もレッスンに通い、練習漬けの毎日だったという。

 幼少期は外で遊びたい気持ちを押さえ、ヴァイオリンを握っていたこともあった。しかし、「音楽が大好きという思いが自らを後押ししてくれた」と当時を述懐する。

 そんな幼い頃の経験は、「最後まで絶対に諦めない強さ」を養ってくれた。

 「諦めなければ必ずその努力が実を結ぶはず。また、そのためにがんばるのは自分だけど、それは周りの人たちの支えがあるからこそ」のことだと話す。

 オーケストラの花形といえるヴァイオリンは、楽器としての総合能力はオケ楽器のなかでトップクラスで、奏でる旋律も圧倒的だ。その歴史も古く、400年以上も前に作られたヴァイオリンが人から人へと渡り、今もなお生き続けている名器もある。「人が多彩な人と出会い交わり合う中で、その人に深みが出てくるように、ヴァイオリンもいろんな人が使う過程で音が変わり、段々と深みが出てくる」―とりわけヴァイオリンに惹かれる理由の一つだ。

 「楽器に魂が宿るかのように、その人の人間性が表れるから、またおもしろい」

 柳さんは今、大学のレッスンに励むなか、演奏会やコンクール、幼稚園や老人福祉施設に自ら足を運び演奏をしたりと、盛んに活動を繰り広げ、さまざまな経験を重ねている。

昌原市立交響楽団との協演(08年2月3日、大阪)

 コンクールには年に3回ほど出場し、数々の賞を手にしてきた。5月24日に大阪で開かれた「第28回 アゼリア推薦新人演奏会」では見事、最優秀賞に輝いた。

 昨年は同会音楽親善大使として、2月に南の昌原市立交響楽団、8月にインドのThe Bombay ChamberOrchestraと協演を果たした。

 「100人近くのオーケストラをバックにした独奏は、オケに負けないくらいの演奏が要される緊張感もあるが、それ以上になんとも言い表せない快感で満ちあふれた」と、オケとの協演の妙味を語る。

 インドには一人で渡った。異国で言葉も通じず不安は大きかった。けれども、「文化や言葉が異なっても、音楽一つで心が通じ合える」喜びを噛みしめられたひと時だったと振り返る。

 今まで幅広いステージを踏んできたが、どんな舞台でも常に「聴衆への感謝の気持ちを忘れないように」と教えてくれた祖母の言葉をモットーに、演奏に臨んでいる。

 レッスンに明け暮れる中、息抜きに訪れるのは、美術館や映画館、ショッピング街だという。それでも、より豊かな演奏を心がけるため、違うジャンルの芸術や趣味ををたしなみながら、そこから得るインスピレーションや日常の中での小さな発見を大切にしている。

 当面、ヴァイオリニストになる夢をかなえるため、海外留学に向け、まい進していく。(姜裕香記者)

※1987年生まれ。中大阪朝鮮初中級学校、大阪朝鮮高級学校卒業。02年在日朝鮮人学生芸術コンクールにて金賞受賞、07年ユネスコ国際民間文化芸術交流協会(IOV)音楽親善大使に任命、08年大阪で南の昌原市立交響楽団と協演、長江杯国際コンクールにて大学の部第1位・中国駐大阪総領事賞受賞、インドのThe Bombay Chamber
Orchestra(BCO)と協演。現在、相愛大学音楽学部在籍中、小栗まち絵氏に師事。

[朝鮮新報 2009.6.8]