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〈朝大 朝鮮自然博物館 J植物など〉 薬用植物、木材標本など多数

朝鮮の山河を彩る樹木と花

植物標本コーナー

 冒頭いつも本文と相関性がない個人的なことを書いており、申し訳ないと思いながらも、やはり個人的なことから始めたいと思う。

 筆者は朝鮮大学校の教職員寮に住んでいる。ベランダからは駐車場が見渡せる。端に大きなヤマザクラの古木が立っていてその脇に愛車をとめているのだが、実に「季節の移ろい」を感じる。

 春は車体のあらゆる面に薄桃色の花びらが張り付いてしまう。「この桜吹雪に見覚えがねえのか!!」と愛車が叫んでいるようだ。花びらが終わると、やがて赤紫色のサクランボが。サクランボは乾いてしまうとなかなかきれいに取れない。そしてヤマザクラの実をたらふくに食べたヒヨドリの糞。秋には大量の落ち葉が愛車につもっていく。こうして一年が過ぎるのだ。

 ひどく傷んでいるこのヤマザクラ。いつまでも花を咲かせてほしいものだ。植物の中には数百年を生きるものもある。動くことのない植物は根をおろした場所で幾年も人や動物の営みを見守っていく。そうして風土や風景を代表する要素となる。ウリナラの文化や風景はウリナラの樹木や花なしでは語れないだろう。ウリナラには7千種ほどの植物が分布している。そのうち維管束を持つ高等植物は4千種以上にのぼる。

不思議な光景、薬用植物の根の液浸標本

 わが博物館はウリナラから送られた薬用植物の液浸標本20本、50種の木材標本、20種のキノコ標本、押し花標本を有する。

 まずは木材標本から紹介しよう。

 直径10センチ、高さ30センチ程度の標本はその樹皮、縦断面、横断面を見せてくれる。茂っている時はどのように、そして材木として裁断した時はどのように見えるのかというのが一目瞭然にわかるということだ。

 大好きなヤマザクラからおなじみのケヤキ、クヌギそしてオオヤマレンゲ、メタセコイヤなどの樹木の年輪まで観察できる。幹の中心が黒っぽかったり、逆に周辺部のみが黒かったりと、見比べると意外と楽しい。

 薬用植物としては朝鮮を代表するチョウセンニンジンからツルニンジン、キキョウ(トラジ)など薬効成分の含まれる「根」の標本が並んでいる。大きな瓶の中に太かったり細かったり、白いのや黒い植物の根が浮かんでいる光景はまさに異空間。トラジの根には解熱作用、鎮痛作用などの薬効があり漢方薬の原料になる。

 キノコ類も液浸標本だ。

樹皮や年輪の違いを楽しめる木材標本

 20種の中にはおなじみのマツタケ、シイタケ、マンネンタケなどがある。マンネンタケは別命「霊芝」、ウリマルで「プルロチョ」と呼ばれ、やはり漢方薬の原料となる。読者の中には日本ではとても手が出せないマツタケをウリナラでお腹いっぱい食された方もいらっしゃるのでは。

 当博物館には金剛山や妙香山、白頭山などに自生する植物の押し花標本も多数あるのだが、現在スペースがなくて展示されていない。いずれ貴重な押し花標本達を群生地別に展示していくつもりである。

 大学の食堂前に特大のキンモクセイの木が立っている。「季節」を感じさせるこの木は、筆者が学生だった頃には期末試験前後(9月末)に花が満開になり、辺に香りが充満した。いまでも「キンモクセイの香り」は筆者に「期末試験の記憶」を甦らせる。あまりいい思い出ではないのだが。(李景洙、朝鮮大学校理工学部准教授)

朝鮮自然博物館へは「朝鮮大学校国際交流委員会」へ電話連絡のうえお越しください。

 朝鮮大学校 東京都小平市小川町1−700、TEL 042・341・1331(代表)。

アクセス

・JR中央線「国分寺」駅北口より西武バス「小川上宿美大前行き」または「小平営業所行き」「朝鮮大学校」下車徒歩1分

・JR中央線「立川」駅北口より立川バス「若葉町団地行き」、終点「若葉町団地」下車徒歩10分

[朝鮮新報 2009.5.27]