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〈みんなの健康Q&A〉 アルツハイマー病−介護の注意点

 Q:アルツハイマー病(以下、「ア病」)患者の介護について注意すべきことを教えてください。

 A:「ア病」にかぎらず、一般的な認知症介護のための原則で重要なことは、認知症は脳の病気であるという認識を介護者全員が共有することです。決して性格や年齢によるものとしてかたづけてはなりません。また、介護する家族の精神的、身体的な負担が大きくなるので、介護に完璧さを求めてもいけません。

 Q:患者との接し方で気をつけなければならないことはどんなことですか。

 A:まず、叱る、怒る、なじる、馬鹿にする、教育しようとするなどの接し方は不適切です。そのためには、患者が考えていること、感じていることを冷静に推測し、理解するよう、介護者や周囲の人々は努めなければなりません。また、患者ができなくなってきたことを、介護者や周囲の人々が支援する、手助けする姿勢が大切で、このとき、せかさず無理強いせず、患者の気持ちを傷つけないような対応が求められます。

 Q:認知症治療全般について教えてください。

 A:非薬物療法として、周りの人がふだんから上手に接触することと介護が基本で、限られた施設ですが認知リハビリテーションというのも試みられています。中核症状である認知機能障害そのものを軽減・消失させることを目的としていて、行動、感情、認知、刺激などに焦点を当てたアプローチがなされています。また、定期的な身体運動は認知機能低下を防ぐといわれています。

 Q:認知症の周辺症状で問題となる行動と心理症状に対して、介護者はどう対応すればよいのですか。

 A:焦燥や攻撃性を伴わない場合には、まず精神的ケアをみなおし、環境への順応などを促すよう工夫してください。患者の訴えに対して頭ごなしに「そんなことがあるわけがない」と叱ったり、説得や説明に終始しても、逆に興奮をあおってしまったり感情的になってしまい、逆効果であることも少なくありません。

 Q:「ア病」の周辺症状の中でも「物盗られ妄想」は頻度が多く、家族を悩ませることが多いといわれています。

 A:「ア病」の周辺症状の30%前後にみられる代表的な症状が「物盗られ妄想」です。この妄想とは「誤った、しかしながら訂正不能の確信」であることを理解する必要があります。

 すなわち、患者の訴えや考えは誤っているのですが、それを周囲の人々が訂正することはほぼ不可能なのです。患者は、その考えを正しいと確信している状態なのです。だからこのような場合には、いったん患者の話をそのまま聞き入れ、一緒になくなった物を探す、かわりの品を用意する、患者にうまく見つけさせるなどの対応がよいとされています。

 Q:怒りっぽい、暴力的であるなど、危険を伴うようになったときには何か薬で抑えられるのでしょうか。

 A:日常の接し方や介護で努力しても効果がないときには薬物療法が考慮されます。適応になるのは幻覚、妄想、暴力行為および睡眠障害などです。精神状態を抑制的に調節する抗精神病薬その他が使われることが多いのですが、効果と副作用について十分な説明と同意のもとに、医師が細心の注意を払いつつ投与するものです。

 Q:薬で「ア病」を治すことはできるのですか。

 A:神経細胞の脱落に伴い低下する神経伝達を改善する薬剤が現在保険適用となっています。ただし、「ア病」の早期に使用することによって認知機能の一時的な改善は期待できますが、「ア病」の病態そのものの進行は抑制できません。簡単に言えば、認知症を治す薬ではなく、症状の進行を遅らせる薬なのです。

 Q:根本的な治療薬はまだ開発されていないということですね。

 A:数多くの治験が行われていますが、まだ臨床応用に値するものは出ていません。認知症の治療で最も重要なことは、早期に正確に診断し、ケアを含む治療方針を早期からしっかりと立てていくことです。

 Q:薬の管理はどのようにすればよいでしょうか。

 A:認知症の薬物療法では、薬を管理できる人、薬効を正しく評価できる人がいる環境を整備できるかどうかが重要な点です。高齢で高血圧や糖尿病といった疾患を合併している患者が多いので、それらに対する内服もいっしょに管理しなければなりません。

 いっしょに暮らしている人がいれば、ある程度その人に任せることができますが、一人暮らしの患者の場合が問題です。近親者やホームヘルパーなどの介護員になるべく毎朝行ってもらい、安否の確認とともに薬の管理をお願いするのがもっとも確実な方法です。できるだけわかりやすく、いっぺんに飲めるよう内服の仕方も工夫する必要があります。

 また、漫然と薬を出すのではなく、きちんと飲めているか定期的に確認することも大切です。そうはいっても、完璧に正しく内服させるのは不可能なので、過剰に服用していなくて、規定の7〜8割飲めていればよしとすべきでしょう。

 Q:「物忘れ外来」というのがあるそうですが、どういったものですか。

 A:認知症性疾患の増加にともない、通常の外来診察では時間的に余裕がなくなってきました。そこで認知症の最も重要な症状である物忘れにしぼってまずは診察を行い、認知症診療に十分な時間を配分し、専門的医療を行おうとするための外来です。大きな病院では複数科の医師による「物忘れセンター」として診療を行っているところもあります。(金秀樹院長、医協東日本本部会長、あさひ病院内科、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800)

[朝鮮新報 2009.5.13]