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〈みんなの健康Q&A〉 アルツハイマー病−原因と症状

 Q:高齢者人口の増加に伴い「認知症」が大きな医療課題となってきています。

 A:認知症とは、「脳の器質的障害によって生ずる持続的な認知機能低下の状態であり、それが社会的あるいは日常的な生活を行ううえで、明らかに障害をきたすもの」と定義されています。以前は「痴呆」あるいは「老人ぼけ」などといわれていましたが、より客観的で医学的な用語として「認知症」という言葉が用いられるようになりました。現在65歳以上の10人に1人が認知症といわれていて、きわめてありふれた疾患と位置づけられています。認知症をもたらす疾患の中でも、とくに頻度が高いのがアルツハイマー病(以下「ア病」)です。

 Q:「ア病」の原因は何ですか。

 A:「ア病」は、脳にアミロイド蛋白という特殊な物質が沈着することで神経細胞の脱落・変性が生じ、その結果、記憶力や判断力が徐々に衰えていく慢性疾患です。まだまだ解明されていない部分が多い病気です。

 Q:早期発見、早期治療が重要だと聞きました。

 A:通常、物忘れがとっかかりとなって診断に結びつくことが多く、運動障害や歩行障害などは末期に至るまでみられません。診断で重要な役割を果たすのは、患者の日常生活をよく知る家族や周囲の人々です。患者の言葉や行動の異変に気づいた彼らからの情報がもっとも重要です。

 その情報をもとに医師が患者への問診を行い、それとあわせて認知機能検査、脳画像検査などが行われます。その場ですぐに診断がつかないこともあり、確定診断には日数を要することが少なくありません。

 Q:CTやMRIなどによる画像診断について教えてください。

 A:脳梗塞や出血性病変を伴わない脳萎縮が典型的な「ア病」の所見ですが、同じような所見でも認知症を認めない人もふつうに存在するので、これだけで確定的なことは言えません。逆に、脳が縮んでいても「ア病」を発症せず、単なる老化現象であることもよくあることです。一方、PETという画像検査を使って脳神経細胞の変化や脱落を評価することができますが、同じような検査で原因物質と見られるアミロイド蛋白のたまり具合を調べる方法も最近研究されています。

 Q:主な早期症状はどのようなものですか。

 A:まず典型的なのは記憶障害すなわち物忘れです。置忘れやしまい忘れ、大事な約束事を忘れる、自分がすでに言ったことを忘れて何回も繰り返す、何回も聞き返す、といった症状です。特徴的なのは、自身が体験した出来事すら思い出せなくなることです。

 Q:物忘れは年齢に伴って誰しも経験することですが、「ア病」とどう区別すればいいですか。

 A:「ア病」では物忘れの症状が進行性で、年を追うごとに悪化します。家族が「1年前と比べて物忘れが進んでいる」と証言する場合は「ア病」の可能性が高いと考えられます。さらに患者が質問に対してうまく答えられなかったとき、答えられないことに対して無頓着であったり、言い訳が多く、また答えをまともに考えようとしないのが「ア病」には特徴的です。

 一方、病的ではない年相応の物忘れの場合は、真剣に思い出そうとしたり、答えられないことに対してひどく困惑した態度を示します。つまり、「ア病」の人は自分が物忘れをしているという認識が乏しく、はなはだしくは物忘れをしていることすら自覚していない、という状況がみられます。健常な人はそれなりに自覚をしているというわけです。こういった点をはっきりさせるためには、専門的な問診技術を持った医師に受診させることが必要です。

 Q:そのほかに早期症状にはどのようなものがありますか。

 A:日時の概念が混乱してきます。たとえば、何回も日時や曜日を聞き返す、慣れ親しんでいるはずの習い事などの曜日を他人や家族に確認するようになります。怒りっぽくなるのも重要な徴候です。さらに、自発性の低下、意欲の減退もみられます。長年慣れ親しんだ趣味や習い事に関心がなくなる、外出することが少なくなり、知人との付き合いをしなくなる、といった症状です。

 Q:性格的にも変化がありますか。

 A:大体は怒りっぽくなります。以前はおとなしい性格だったが、このごろ怒りっぽい、ささいなことですぐに怒る、すごい剣幕で怒る、といった状況です。

 Q:実際、家族やまわりの人が介護で困るのは、行動問題といわれています。

 A:中核症状とよばれる物忘れや言語の障害は、とりあえず身の回りの生活に大きな支障をきたすことはなく、他人にも迷惑をかけることは少ないと思います。一方、「認知症の行動と心理症状」と呼ばれる周辺症状は、行動や精神状態に異常がみられる場合をさします。なかでも困るのは、妄想や幻覚、うろうろ歩き回る、暴力行為、暴言など、行動が活発になる症状です。患者自身に身体的危険が生ずるだけでなく、周囲の人にも迷惑がかかります。(金秀樹院長、医協東日本本部会長、あさひ病院内科、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800)

[朝鮮新報 2009.5.9]