top_rogo.gif (16396 bytes)

〈朝大 朝鮮自然博物館 H大同江小動物〉 幼生〜成体の成長記録標本

二枚貝、巻貝、甲殻類

幼生から成体まで非常に美しく配置された標本

 前回、朝鮮自然博物館の「大同江魚類標本」にある魚の標本をいくつかピックアップして紹介した。その標本たちが朝鮮大学校に贈られてきたのはちょうど10年前。実はその1999年から3年間、大同江ではさらなる生物収集活動が実施されていた。

 2001年、大同江に棲息する二枚貝の標本が祖国からわが博物館にやってきた。ついで、巻貝と小動物の標本が2002年にも贈られてきた。

 これらの生物標本は、1種につき1匹ずつ捕獲して標本にしたのではなく、幼生から成体に至るまで数個体、場合によっては数十個体を捕らえ、成長記録標本としたものだ。

 これらの標本作製のためにどれほどの苦労と努力が注ぎ込まれただろうか。大同江魚類と貝類、甲殻類など小動物標本のセットは、おそらくここ朝鮮自然博物館でしか見ることのできないコレクションである。今回はこの非常に稀な、そしてとても貴重な大同江小動物の標本を紹介しよう。

「チュウゴクモクズガニ」。甲羅のふちにある突起の数が「モクズガニ」と異なる

 まずは二枚貝の標本。大小さまざまな29種の中でまず紹介すべきは、コレクション中唯一ウリナラの固有種である、ガマノセガイ属の「Lamprotula coreana(L.coreana)」である。朝鮮名に直訳すると「真珠イシガイ」と呼べるが正式名称はない。殻長は120ミリ、殻幅は65ミリとかなり大型の貝である。殻の外面は栗色でノコギリ状の突起があり雄々しいが、内側は真珠光沢があり滑らかである。肉厚で光沢のある内壁を球状に削ると良質の「真珠核」になる。

 普段目にする真珠は、アコヤガイなどの貝に「ピース(貝の外套膜の一部)」と「真珠核」を移植することによって得られる。乳白色の核に独特な模様の真珠層がコーティングされるのだ。日本の真珠生産で使用される核は多くの場合米国淡水貝の殻から得るらしい。L.coreanaからは、世界的に最も大きい真珠核(直径14ミリ)が取れることで知られている。それほどの厚さを誇る殻の内壁は、真珠核以外に囲碁の碁石にも使われるそうだ。

大同江でしか見られない「L.coreana」と「真珠核」

 次は巻貝を紹介しよう。マルタニシの仲間であるウスリータニシは、殻高が60ミリと本コレクションの巻貝中では最大である。タニシ科の貝は卵でなく稚貝を産むというのをご存知だろうか。ウスリータニシは繁殖期に80あまりの稚貝を産む。ちなみに巨大生物としてお茶の間をにぎわした「ジャンボタニシ」はタニシ科ではない。大きなタニシに対してヒラマキガイの仲間である「Gyraulus convexiusculus」は 殻高1.5ミリ、殻径5ミリ程度と最小だ。巻貝といえど大きさも形も多彩である。

 最後に甲殻類を紹介しよう。エビ類8種、ザリガニ1種、カニ類11種が含まれる。標本中で最も大きい「チュウゴクモクズガニ」。「上海ガニ」とも呼ばれ日本でもおなじみである。ハサミに絨毛が生えているのですぐわかるだろう。淡水といえども産卵は海水で行われ孵化した幼生はしばらく海で育ち、西海閘門をくぐって大同江に帰ってくるのだ。その他、アカテガニやザリガニなどよく知られる甲殻類標本が並んでいる。

 寒さが和らぎ生き物が活発に動きだす季節になった。博物館自慢の「大同江生物コーナー」でウリナラの豊かな自然をご体感あれ。(李景洙、朝鮮大学校理工学部准教授)

朝鮮自然博物館へは「朝鮮大学校国際交流委員会」へ電話連絡のうえお越しください。

 朝鮮大学校 東京都小平市小川町1−700、TEL 042・341・1331(代表)。

アクセス

・JR中央線「国分寺」駅北口より西武バス「小川上宿美大前行き」または「小平営業所行き」「朝鮮大学校」下車徒歩1分

・JR中央線「立川」駅北口より立川バス「若葉町団地行き」、終点「若葉町団地」下車徒歩10分

[朝鮮新報 2009.3.25]