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〈朝鮮と日本の詩人-85-〉 松田解子

ああよい民族 ああよい国朝鮮

 鉈豆袖の朝鮮乙女が 胸をおどらせる
 くねる乙女の全身に にくしみはゆすぶられ
 つらみはとかされ なつかしみはあふれてくる
 ああよい民族 よい国朝鮮
 鉈豆形の袖から すきとおるチマの裾から
 乙女の手足のくねるごと 日本人の私は涙をながす
 うつくしすぎてあなたがたの国は裂かれたのか
 それなら日本も うつくしすぎて不幸なのか

 あなたがたの全身がくねるごと つらみ百倍勇気千倍
 いちばん底の裸でこそ あなたがた朝鮮と日本同胞はいっしょだと、

 この詩「朝鮮の乙女のおどり」の文は全4連の19行で、そのうちの第3連と第4連が右の引用である。アカハタ紙の1953年6月21日号に掲載された。「朝鮮休戦−朝鮮のお母さんたちへ」と献辞のついたこの詩は、軽快なリズムにのせた朝鮮と日本との真の友好親善の情あふれる秀吟である。詩行ににじみこんでいる愛情と怒りと憎しみが、渾然一体となっていて、それが政治性の叙情を醸し出している。「いちばん底の裸」での交流が朝・日両民族にとって大切であることを、詩人は朝鮮舞踊の優美さに託している。

 松田解子は本名を大沼ハナといい、1905年に秋田県の荒川鉱山で生まれ秋田女子師範を卒業した。26年に上京して女工となり労働運動に接近した。日本プロレタリア作家同盟に加入して詩を、ついで小説を書きはじめ28年に読売新聞新人賞に入選した。以後「戦旗」「無産者新聞」に詩、小説を発表し新進の女流として認められるようになった。代表作「おりん口伝」は第8回田村俊子賞を受け広く読まれた。作品に「おりん母子伝」「地底の人々」などの実在感にとむ小説と、詩集「辛抱づよい者へ」「坑内の娘」などがある。日本民主主義文学同盟員、日本文芸家協会員。85年に未来社から全詩集が刊行されており、この詩はそこから選んだ。(卞宰洙・文芸評論家)

[朝鮮新報 2009.3.23]