〈本の紹介〉 「憂国」と「腐敗」 日米防衛利権の構造 |
利権に群れる米日 政・財・官の実態に迫る 著者の一人である野田峯雄氏はこれまで、「日本」「韓日」「米日」「米韓日」の暗部に鋭いメスを入れてきたジャーナリストである。 1987年の大韓航空機失踪事件の真相を追及した「破壊工作」はじめそれらの著書は、権力という、実体がありながらも表面的にはその一部しか顔を見せない、得体の知れない存在に恐れず、ひるまず、真正面から挑んできた所産である。 その野田氏が意欲的に取り組んできたテーマのひとつが、安全保障という美名の下、その実、膨大な利権をはらんだ軍需産業に群れる「米日」の政・財・官の実態の解明である。 もう古い話になってしまったが、自衛隊の次期主力戦闘機(FX)選定にまつわる1970年代のダグラス・グラマン疑惑など、数千億規模の導入費用に対し、一機当たり1000万円のバックマージンがあったのではないかと考えられているのだから、軍需産業やそこに群れる政・財・官にとってこれほど美味しい話はない。 本書は2007年、防衛省・守屋次官の逮捕によってその一端が明らかになった「日本とアメリカに横たわる巨額の防衛利権」が「腐敗」を「生み出す温床になっているのではないか」(序章)と、05年からの困難ながらも執拗な取材を経てまとめられた。 日本における「防衛利権」は、「北朝鮮の脅威に対処する」との看板の下、ミサイル防衛(MD)システムに代表されるように年々、膨らみ続けている。防衛省の予算は5兆円にもなる。拉致問題の解決を前提に6者会談合意の履行を拒むのも、実は「防衛利権」温存のためではないかと、勘ぐりたくなるほどだ。 「1章」から「15章」まで、「序章」「あとがき」を含めると415ページの大著だが、ノンフィクション。「政治を理解するためには軍事を知れ」という先達たちが指摘し続けてきた言葉通り、米日政・財・官の、実像がくっきりと見えてくる。(野田峯雄・田中稔著、第三書舘、2000円+税、TEL 03・3208・6668)(厳正彦記者) [朝鮮新報 2009.3.19] |