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「高麗・千年の都『開城』」を出版して

統一国家の息吹、豊かな文化の香

写真=文光善、文=洪南基、2500円+税、梨の木舎、TEL 03・3291・8229

 初夏の気配が残る2008年9月初め、開城に足を運んだ。風薫る07年5月、紅葉まっさかりの11月に続いて3度目の訪問だった。

 開城は、朝鮮初の統一国家高麗の千年の歴史と文化が香る古都である。

 北南朝鮮、日本の学術関係者らの協力で蘇った中世、東アジア最大の寺院・霊通寺や大学者にして政治家として歴史に足跡を残す鄭夢周ゆかりのッ陽書院、終焉の地である善竹橋など遺跡が多い。

 さらに、高麗王朝の始祖・王建の陵墓をはじめ、高麗時代の王と王后、王族の墓も点在し、とくに松嶽山の北側と開城の西側万寿山の南側丘陵の一帯には20余基が集まっている。さらに、高麗時代の山城として名高い大興山城(周囲10.1キロメートル、城壁の高さは4〜5メートル)や城内の観音寺、大興寺、朴淵の滝などを包含する風光明媚な美しい都である。
 

朴淵の滝の絶景

中世の東アジア最大の仏教寺院の一つ、霊通寺全景

 分断の歴史とともに、朝鮮民族を引き裂く苦痛の象徴として世界に知られた古都は、北南の経済協力の拠点(開城工業地区)となっている。

 歴史が宿る古都の風情、朝鮮半島のいまの息吹とその魅力を、本書を通じて多くの人々に知っていただきたいと心から願っている。

 今から30年前の1979年に世界卓球選手権大会の取材で初めて平壌を訪れて以来、北を38回、南は6回訪問し、各地を取材する機会を得た。とりわけ印象深いのは、07年5月の北南鉄道連絡区間試運転で、北の金剛山駅から南の猪津駅まで同乗したときのこと。

 軍事境界線を越える際、乗り合わせた北南の関係者らからいっせいに大きな拍手が起き、笑顔がこぼれた。

 車窓から外を眺めても、同じ川が北南を貫流し、特徴ある岩山に生えた松の緑が歴史の同一性を静かに伝えていた。

大興山城北門につながる歩道

 その風土や暮らしにも、北と南に違いはない。わが社の支局が置かれている大同江沿いに建つ平壌ホテルのスタッフの人情味あふれる接客ぶりは、長期滞在で多忙な取材活動に追われる身にどれだけの癒しを与えてくれただろうか。疲れ気味のときにそっと差し入れてくれた蒸かしたさつま芋のおいしかったこと。

 一方、第1回在日同胞故郷訪問団の取材で7年前、済州島を訪れたときに受けた温かい歓迎ぶりも忘れがたい。この地は私自身の両親の故郷でもある。

 それを知った関係者が、島で獲れたイカ、エビ、タコ、アワビなど新鮮な魚介の刺身を食べきれないほど出してもてなしてくれたことを懐かしく思い出す。

 本書の刊行にあたり、これまで取材活動の便宜をはかり、支えてくれた祖国の人々と朝鮮新報社の同僚たち、多くの困難にもめげず出版を引き受けてくださった梨の木舎・羽田ゆみ子代表に、心から感謝したい。(文光善・本紙カメラマン)

[朝鮮新報 2009.3.16]