top_rogo.gif (16396 bytes)

〈本の紹介〉 有事法制下の靖国神社

歴史の事実に学ぶ大切さ
 

 著者の西川さんはキリスト教徒であり、戦没者遺族の一人。長年「ノンポリ生活を送っていた」西川さんを変身させたのは、1969年の靖国神社法案の国会提出だった。これは同神社を国家護持にするという戦後最大の悪法と呼ばれた法案であった。5年後に廃案になったが、有事法制とからんで、日本にはいまだに天皇の靖国参拝を主張したり、「海外派兵のための恒久法」など手を替え、品を替え「靖国神社国営化」を目論む動きが続いている。

 こうした日本国内の動きに危機感を抱いて著者は1999年(新ガイドライン法が国会通過した年)の通常国会から10年間にわたって、ほぼ欠かさず国会を傍聴してきた。本書はその「国会傍聴記」である。

 いまや侵略戦争賛美の神社としてアジアのみならず、国際社会からも厳しく警戒される靖国。

 「歴史の事実に学ぶことが、最も重要であると思っている。特に1868年以降1945年までに、日本がアジアに対して何をしたのかを、歴史の事実にもとづいて学び、その検証によって歴史認識を他者と共有することを願っている」と著者は指摘してやまない。

 1869年に創設された靖国神社は、1874年の日本軍の台湾出兵以来のすべての戦争と植民地弾圧の日本軍戦死者を祀っていることを忘れてはならない。江華島事件、壬午事変、甲申事変など日本の朝鮮侵略過程での日本軍の戦死者、靖国神社で「韓国暴徒鎮圧事件」「匪賊・不逞討伐」などと呼んでいる植民地鎮圧のための日本軍戦死者を含め、旧日本帝国の植民地獲得、植民地支配のための軍事行動の日本軍戦死者が合祀されている。

 敗戦から60余年。戦争犯罪人らを免罪した日本と、侵略戦争の犠牲になった朝鮮・アジアの人々との間のあまりにも深い溝。靖国神社を検証することは、日本の戦争犯罪を追及し、新たな加害の戦争の道を繰り返させないための一助となるだろう。

 本書の上梓を「アジアへの平和のあかし」であるとする著者の労苦に敬意を表したい。(西川重則 著、梨の木舎、2000円+税、TEL 03・3291・8229)(公)

[朝鮮新報 2009.3.13]