伝統音楽公演「ソリ」に出演 崔錦淑さんに聞く |
朝鮮の土の香り漂う民謡を 春らんまんの4月、「民族の音を永遠に−ソリ(音)」の言葉を掲げて、朝鮮半島の伝統音楽の公演が東京で開かれる。
出演するのは、フリーで活躍する民謡歌手の崔錦淑さん、カヤグムの金オル、チョッテ奏者の李在洙さん、ソヘグム奏者の河明樹さんらで、金剛山歌劇団のチャンセナプ奏者・崔栄徳さんが友情出演する。
崔錦淑さんは、11年前、民謡歌手として華やかな舞台を務めていた金剛山歌劇団を退団、二人の子の出産、子育てに一時専念してきた。 「舞台に立ち、同胞たちの喝采を受ける日々は、本当に幸せだった。もともと古典的な民謡が好きで、祖国でその源流を辿ったり、教えてもらったり…。祖国の懐があったからこそ、独特なリズムが身についたのだと感謝している」と懐かしむ。 崔さんは総連の活動家の両親の下、大分県に生まれ、初級部1年生から朝鮮大学校師範科卒業までの14年間、寄宿舎で学生生活を送った。「福岡市内の金平団地の脇に初級学校があって、団地の一室が臨時の寄宿舎だった。そこの小さな広場である日、歌舞団の小公演があった。たくさんの同胞たちが集まって、拍手して、一緒に輪になって踊る様子が、子ども心にもウキウキして楽しかった」。 幼心にしっかり刻まれた朝鮮の民謡のリズムと人々の弾ける笑顔。その幸福感に包まれて朝鮮の歌への思いが膨らんでいった。 朝鮮大学校では、音楽の終生の師となる故高創一氏と出会い、歌の才能を認められ、芸術公演の独唱をまかされたりもした。卒業後は当然、歌劇団への入団を希望していたが、アボジの反対で断念。筑豊朝鮮初中級学校(当時)の教壇に立つことに。 「民族教育を受けた恩に報いなさいという、アボジの言葉を胸に刻み3年間脇目もふらず、一生懸命がんばった」。が、好きな音楽への思いは断ち難く、恩師の高先生に手紙を送って悩みを打ち明けた。 「すると、先生から速達が届き、迷わず歌の道に進みなさいと」 恩師に背を押されて、晴れて歌劇団に入団し、民謡歌手として舞台に立った。同胞から送られる割れるような拍手と喝采の日々。苦労もあったが、それをはるかにしのぐ充実感。歌劇団での10年間は、「生きる上でのプライドを育んでくれた。また、年中通っていた平壌で、当時朝青の活動家だった夫ともめぐり会えた」。結婚して5年間、崔さんが芸術活動に献身できるよう夫は支え続けた。 そんななか、30代半ばを迎え、ギリギリの選択を余儀なくされた崔さんは、退団し、母となった。いまは初級部3年と3歳の2人の息子を持つ。「子どもに新しい命をもらった」感激。数年のブランクの後に、フリー歌手として復帰。小公演などに出演して帰ってくると「客席からアンコールが出た?」と心配してくれるわが子。家族の熱い応援を受けて、歌への深い思いがふつふつとわいてくるという。 「祖国で教わった民謡と昔、ハルモニたちが口ずさんだ懐かしいメロディー。私がいま学ぶパンソリは、これらが合体したようなもの。古えから朝鮮半島の大地に、人々の喜怒哀楽を肥料として生まれた民族の文化遺産。多くの人にぜひ、聴いてほしい」(朴日粉記者) ◇ ◇ 日時=4月25日、1部−14時30分〜(14時開場)、2部−18時30分〜(18時開場)。 場所=東京建物八重洲ホール(JR東京駅八重洲中央口より徒歩2分)。 主催=ブライダル・チョゴリ彩。問い合わせ=TEL 03・5950・2309。 [朝鮮新報 2009.2.27] |