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〈第31回在日朝鮮学生「コッソンイ」作文コンクールから〉 中級部1年  散文部門1等

僕の「夢と希望」

 「大きくなったらウリハッキョの先生になることが、僕の希望であり夢です。後輩たちに、光り輝く朝鮮の歴史を教える先生になりたい」

 僕の力のこもったこの発言に、会場内からは数百人の大きな拍手、「たとえ体は小さくとも立派だ。しっかりしている」と、ほめてくれる声が響き渡った。

 この場面は、7月に千葉県青商会のアボジたちが行った「民族フォーラム」のワンシーンだ。

 校庭に並んでいる全校生に向かって、校舎の屋上から発表した「僕の主張」が巨大スクリーンに録画で映し出されたのだ。

 お兄さんたちは、うなずきながら拍手を送ってくれ、初級部の子たちは、僕を「俳優」のようにうらやましく見つめていた。

 僕は恥ずかしくて下を向いていたけれど、心の中では誇らしかったし、うれしさであふれ、出そうな声をぐっとこらえてニコニコ笑った。

 その時、どうして「僕の夢、希望は学校の先生になることです」と言ったのかを、もう一度思い返してみる。

 初級部5年生の時は、他の子のように「僕の夢は、W杯サッカー選手、いや、宇宙飛行士、いやいや、ノーベル賞科学者」だったと思う。

 だから「僕の夢、希望は先生になることです」という希望を持ったのは、6年生の時だったはずだ。

 それでは、何がきっかけで「W杯サッカー選手、宇宙飛行士、ノーベル賞科学者」から「先生」になったのか。

 6年生のある日。

 担任の先生は、騒ぎ立てながらいたずらばかりしていた僕たちに、「もう6年生だから、将来何をしたいのか、『夢と希望』が何なのかを考えてみよう」と言った。

 先生の言葉に、僕は内心(どうして急にそんなことを言うんだろう?)といぶかしく思った。

 あとで聞いてみると、先生は初級部で一番上の学年になったのに、いたずらに没頭する「幼稚」な僕たちに、「大人」のような心を持つよう仕向けてくれたという。

 「君は大きくなったら、何になる?」という質問に照れながら、「えーっと、うん、まだわからない」、力強い声で「そうだ、僕はサッカー選手」、自信にあふれ「私は、調理師。世界一の調理師よ」

 冗談交じりで「僕はなんだかんだ言っても、『タレント』だよ」という声に、「何をくだらないこと言ってるの。僕は、人類文明発展に貢献するコンピューター技術者になる」という、「優等生」の答え。

 教室には、「オー、すごい!」という驚きと期待にあふれた声、「君には無理だよ。他のこと考えた方がいいよ」などと、笑い声が響いた。

 すると、「やぁ、次は君の番だよ。言ってみなよ」という言葉、いよいよ僕の順番がきた。

 「そうだね、僕の番だよね。僕は…」

 一息つきながら、躊躇し立った。

 「僕は、先生になることだよ」

 そうすると、友だちはそれぞれ一言ずつ言った。

 「そう? サッカー選手じゃなかったっけ?」

 「『先生』と言っても、いろんな先生がいるじゃない」

 「『お医者さん』『国会議員』『委員長』も全部先生だけど」

 教室は、僕の話で盛り上がった。

 「そう、みんな先生。僕がなりたい『先生』は、そのまま先生だよ」と、僕が答えると、僕たちを見守っていた先生が、優しく微笑みながら言った。

 「あなたは、どうして先生になろうと思ったの?」

 僕は、先生と友だちにその理由を述べた。

 僕は今まで、いろんな先生と出会った。

 授業を楽しく、わかりやすく教えてくれる「授業名手先生」、普段は愉快だけど、1回悪さをすると、厳しく叱る「虎先生」、どんな疑問にもすらすら答える「秀才先生」など、僕たちの兄、姉、アボジ、オモニのような頼もしい先生が多かった。そんな先生たちの姿は、自然と僕の心の中に憧れを芽生えさせていた。

 すると先生は、「そう、本当にえらいわね。先生もとてもうれしい。ありがとう」と言った。

 友だちは、「君は間違えなく立派な先生になれるよ」と言ってくれた。

 その時から、もう1年が過ぎた。

 「民族フォーラム」で言った僕の決心は変わっていない。

 僕は、朝鮮の歴史がとても好きだ。

 檀君、乙支文徳、姜邯賛、李舜臣、世宗…名前を挙げただけでも、力がわいてくる。

 僕は、母校・千葉朝鮮初中級学校の歴史の先生になりたい。

 そして、後輩たちを過去をよく知り、現在を楽しく生き、未来を開拓していく朝鮮の生徒に育てたい。

 だけど、最近こんなことを考えるようになった。

 (僕が先生になった時、生徒数はどれくらいだろう? 大学を卒業して戻ってきた時、母校はあるかな?)

 だから、友だちやお兄さん、お姉さん、弟、妹たちに言うことがある。

 それは、今は一緒に学ぶ親友だけど、大人になって結婚し子どもができたら、僕に、梁昌樹に預けてくれたらうれしいと。

 近頃は、日本学校に送る朝鮮人が多いが、僕が教員になった時、安心して僕に預けてくれるよう、千葉の先生たちのように、かっこよくて、楽しく、豊富な知識を持った立派な先生になりたい。

 これから、たくさん勉強しよう!

 立派に大きくなって、僕の「夢と希望」を必ず成し遂げよう!

 未来の頼もしい「梁昌樹先生」が誕生する日を夢見て…。

(千葉朝鮮初中級学校 梁昌樹)

[朝鮮新報 2009.2.20]