〈みんなの健康Q&A〉 花粉症−予防と対策 |
ピークは5時半、夕方の外出は要注意 覆い付きのめがね、マスク着用を Q:スギ・ヒノキ花粉症の人が最近増えていると聞きましたが、どうしてですか? A:1950〜70年代に植林されたスギ・ヒノキが成熟し、近年盛んに花粉を飛散させる樹齢に達したことが主因と考えられています。また、地球規模の温暖化が夏期の花芽形成を促進し、翌年の春に多量の花粉が生成されるようになっています。そのほか、土の地面が少なくなり花粉が舞い飛びやすくなっていること、食生活の変化、あまりにも清潔になりすぎた生活環境なども花粉症増加に関与しているといえます。 Q:花粉が飛んでくるのは1日のうち何時ごろが一番多いのですか? A:風の強さと関係がありますが、午前10時頃までは霜や露などの影響もあり、花粉が大気中に放出されることは非常に少ないといわれています。それ以降、気温の上昇とともに花粉放出の準備が整います。結局、花粉が数十キロ離れた都市部にまで到達する時刻は、午後3時半頃からピークは5時半頃となります。夕方に一番たくさんの花粉が飛散しますが、遅くとも午後8時にはそれも収まります。 Q:花粉症を予防するためには、ふだんどのようなことに気をつければよいのでしょうか? A:予防的手段として最も大切なことは花粉アレルゲンの回避、すなわち花粉を吸入しないことです。風の強い晴れた日は花粉の飛散が多いので、外出を控えめにしたほうがいいでしょう。外出しなければならない時は、覆い付きのめがね、ゴーグル、マスク、スカーフを着用するのも方法です。衣服は花粉が付きにくいスベスベした素材のものを選び、髪は小さくまとめて、花粉が付きにくくします。また、家に入る前は、玄関先で衣服や髪、持ち物に付いた花粉をはらうようにしましょう。最近は花粉除去専用のブラシが手に入ります。さらに心がけていただきたいのは、外から帰ったら手・目・鼻を洗い、うがいをすることです。洗濯物は花粉の付きにくい場所に干しましょう。 Q:外出時に使うマスクとめがねはどのようなものが適当ですか。 A:織り目が細かいマスクほど良いと考えがちですが、花粉粒子はマスクを通過する際に屈曲した流路の途中で捕らえられるので、目の細かさだけで機能を判断できません。細かすぎると通気性が悪くなり、マスクの端と顔との隙間から流入する空気量が多くなり、侵入する花粉がかえって多くなります。顔面にうまく合致し、息がしやすいものがよく、衛生面からは使い捨てのものが推奨されます。 めがねも顔との隙間が少ないものを選んでください。めがねとの隙間から目に入る花粉数を約3分の1に抑制でき、さらには防御カバーのついためがねの装着が効果的です。 Q:屋内での花粉対策用品としては何がありますか。 A:各種の空気清浄機が販売されていますが、花粉は短時間で床面に落ちるので、空気清浄機で花粉を完全に除去するのは不可能です。室内塵の中にも多くの花粉が存在し、カーペット、カーテンなどにたくさん付着します。このような花粉を効果的に除去するための湿式シート、寝具・カーペットに噴霧するだけで花粉の付着を抑制し除去しやすくするスプレー剤も市販されているので、試してみてもいいでしょう。鼻症状軽減のため家庭用温熱吸入器あるいは鼻洗浄器を使用している人もいます。 Q:花粉症によいという売り込みで、飲み物や食べ物が続々と登場していますが、効果のほどはいかがでしょうか。 A:たとえ効果がなくても花粉症によいというふれこみで、「自然食品」と称するものや民間療法がマスコミでしばしば紹介されています。花粉飛散が終われば自然に症状は治まるため、あたかもそれらが効いたかのような錯覚をしてしまいます。しかし、実際には有効性を示す根拠のないものが大半です。効果が高いなら、その成分を使った薬剤がとっくに出ているはずです。 Q:医療機関での一般的な治療について教えてください。 A:基本的には薬物治療です。花粉飛散情報や患者の例年の症状を参考に治療計画が考案されますが、今日では初期治療という考え方が広まり、花粉飛散の1〜2週間前から薬物投与が行われるようになりました。この方法により諸症状が軽減され、そのシーズンを楽に過ごすことができるという人が増えています。すでに眼症状、鼻水・鼻づまり、くしゃみなどの症状が出現していても、そのうちどれが主体かによって処方をある程度選択できるようになっていますので、自分の症状をよく医師に伝えることが大切です。 点鼻・点眼薬は即効性があり、局所使用なので全身的な副作用が出にくいという利点があります。初期療法に組み入れられることも多くなりました。 Q:薬物治療以外にはどのような治療法がありますか。 A:スギ花粉エキスを注射用に精製したものを少しずつ皮下注射することで免疫を獲得させる「免疫療法」、外科的療法すなわち鼻粘膜に対する手術などがあります。それぞれ専門的な治療であり、副作用や合併症について認識した上で、費用対効果も十分に考慮しなければなりません。(金秀樹院長、医協東日本本部会長、あさひ病院内科、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800) [朝鮮新報 2009.2.18] |