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〈本の紹介〉 軍事主義とジェンダー

女性は戦争にどう加担したのか

 女性の戦争参加は社会の中の男女平等とどう関連しているのか。本書は日本・ドイツ・米国の女性雑誌を手がかりに第2次世界大戦期の女性の戦争協力とジェンダー平等を考え、殴り返す力を持たない人たちが、生きのびていく社会を展望した意欲的な書。

 戦争の20世紀から平和の21世紀へ−。世紀の転換にあたって、人々は何の根拠もなく戦争がなくなることを望んだ。だが、不安は的中し、新しい世紀はブッシュの発動した「新しい戦争」によって最悪の幕開けとなった。そのなかで、日本の戦後体制は大きく揺らぎ、いまや自衛隊の海外派兵は日常の風景と化したのである。

 本書の編者でもある女性史研究者の加納実紀代さんは次のように指摘する。

 「近代国民国家は、男たちを国民軍に強制動員することで『男らしさ』を形成し、女性抑圧のジェンダー秩序を構築してきました。軍隊は『男らしさ』の学校であり、男の聖域でした。しかし、21世紀の現在、女性たちもまた男性とともに戦争を担っています」

 アフガニスタン、イラクと空爆を繰り返している米国空軍の20パーセントは女性兵士であり、海外派遣されている日本の自衛隊にも女性兵士がいる。こうした女性の軍事化は20世紀の二つの戦争を経て、徐々に進行していたが、世紀末になって一気に加速したのだ。これは、軍隊内の男女平等を求めるアメリカ・フェミニズムの要求と重なるものだった。

 こうした急速に進む社会全体の軍事化にいかに女性たちが対抗すべきか、本書はこの問題に長年取り組んできた上野千鶴子・東大教授の「軍事主義とジェンダーをめぐる問題提起」も踏まえて、適切な提起を行っている。上野さんは「強者」の平等ではなく、「弱者」が生き延びるための思想とするフェミニズムのパラダイム転換を強調する。

 歴史を踏まえて、女性がいかに現在と向き合い平和を構築するのか、重い課題であろう。(敬和学園大学戦争とジェンダー表象研究会 編、1500+税、インパクト出版会)(朴日粉記者)

[朝鮮新報 2009.2.17]