若きアーティストたち(62) |
ジュエリーデザイナー 任梨沙さん 身につける人の個性やファッションをよりいっそう引き立たせるジュエリー。 パーティーやちょっとしたお出かけ、普段着のワンポイントに…、その場面もさまざまだ。 「ちょっと個性的ながらも、普段の生活の中でつけられるようなものを」−。 東京・恵比寿三越で1月30日〜2月5日に開かれた、「『TEN アイテム展』〜ジュエリー&アクセサリー作家10人〜」に出品。 同展には、アート志向の作品から、ポピュラリティーを打ち出す作品まで、作家たちの個性あふれる作品が並んでいた。 任さんの作品は、金や銀、とりわけアルミニウムを用いたジュエリーが多い。それらはシャープでありながらも、色鮮やかでほんわり温かみがあり、一見アルミとは思わせない。 現在、手がけた作品をデパートやギャラリーで展示、販売したり、サイズ直しなどの修理、加工やオーダーメイドも受けている。 金属工芸を始めたのは、「彫金をやっていたオモニの影響」。
大阪の実家には、オモニが作ったネックレスや指輪など彫金細工が多くあり、幼心にも何気なく興味そそられたという。 高校では美術部に所属し、美術の道へ進むことを決心。東北芸術工科大学に入学し、金属工芸を専攻した。 学生時代はジュエリーのみならず、オブジェやクラフトなど何でも作った。数をこなすうちに、机一つで作れる小物に惹かれ、ジュエリー制作に打ち込むようになった。 その後、東京芸術大学大学院の美術研究科修士課程を修了し、都内にある美術専門学校の助手を4年間務めた。 しかし、「自ら作ることにもっと時間を費したい」「自分の力を試してみたい」と、昨年6月からフリーランスになった。 日本学校出身だが、本名で活動する。「小学校の頃は、『朝鮮人』ということで心ないことを言われたこともあったが、自分の存在、名前を隠すつもりはない。この名前でずっとやってきたし、これが私だから」と、胸を張る。 今、扱う素材は主にアルミだが、以前はシルバーを使った作品が多かった。しかし、「いろんな色を出してみたい」との思いから、さまざまな素材を使い、試行錯誤を繰り返した。その末、出会ったのがアルミだった。 「金や銀は、光沢を出したり、色をくすぶらせたりすることしかできないけれど、アルミは、着色ができるから、金属独特の冷たさが和らぐ。また、素材が軽いから、太い線や大きさもあまり気にせずデザインできる」 数ある工程の中、デザインや色づけなど、楽しい作業がある反面、数十回、数百回、磨いてやすりをかける、単調な作業に嫌気がさすこともある。 けれども、「作品を手にした人が喜んでくれることが何よりもうれしい」から、その手が休まることはない。 少しでも買い手のニーズに答えられるよう心がける。「おしゃれなだけではダメ。たとえば、気に入ったデザインでも、金具がつけにくいと、結局使わなくなってしまうから」と、生活に根付くよう細部にまで工夫を凝らす。 デザインから制作、販売までをこなすが、現在の収入は売れた作品の分だけ。「フリーになる前の方が経済的には安定していた」。今はその支えがない。むろん、焦燥感に駆られることだってある。 しかし、「今、できることを地道にコツコツ、一つひとつと向き合いながら進んでいきたい」と目を輝かせる。 5月5〜11日、東京・日本橋三越新館8階でグループ展を催す予定。(姜裕香記者) ※1979年生まれ。大阪府出身。東北芸術工科大学芸術学部美術科工芸コース金属工芸専攻学士課程、東京芸術大学大学院美術研究科修士課程工芸専攻(彫金)修了。04年から美術専門学校の助手として従事、現在はフリーランスとして活動。02、04年日本ジュエリーアート展入選、04年東京芸術大学サロン・ド・プランタン賞受賞。グループ展「ウリキョレ女性展」(大阪、京都)や「ジュエリー&うつわ展」(三越本店)などに出展。 [朝鮮新報 2009.2.17] |