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「在日高齢者の生きがい−実態調査と展望」(下) KS医療・福祉ネット関東&朝鮮大学校短期学部1年生

セセデ同士の繋がり不可欠

 在日同胞高齢者の「生きがいづくり」には、在日同胞同士の繋がりが非常に重要である。よって私たちセセデ(新しい世代)の役割は、同胞高齢者の交流の場を作って、それを提供したり、今ある交流の場を、より活性化させ、維持していくことだ。

 まず朝鮮学校で行われている長寿会や、支部や分会の集まりなど、現在既に提供されている同胞高齢者の交流の場をより活性化させるのが非常に重要である。そのためには支部や分会等地域を活性化しなければならない。そうしなければ、地域の同胞は分散してしまい、既にある場が衰退するのはもちろん、なくなる恐れすらある。セセデが率先して地域の同胞を集めれば、これらを活性化し維持する事が可能となり、最終的には、同胞社会の活性化にもつながる。

 また半数以上の同胞高齢者がさまざまな疾患を抱えているが、同胞による同胞のための医療福祉の提供がこれからもより必要である。このように同胞医療従事者が同胞高齢者に関わることで、施設や各支部、分会における「認知症予防体操」の実施、在日同胞ヘルパーの派遣事業など、新たな事業展開も可能だろう。これが実現すれば、同胞同士の交流の場を作って、それを提供したり、今ある交流の場をより活性化させ維持していく事が可能となる。

 一方、前述した在日同胞高齢者の「生きがいづくり」には、さまざまな同胞の交流が不可欠である。高齢者同士の交流は、在日という共通の特殊な歴史的背景や、現在抱えている悩みや問題を互いに分かち合えるので、彼らにとって心のよりどころとなる。また多くの事を後世に伝えたい同胞高齢者とセセデの交流によって、多くの高齢者がセセデと話すことに喜びや楽しみを見出すことができるし、セセデは日常生活では得られない多くのことを学ぶことができる。

 ここで私たちはセセデ同士の繋がりにも注目した。これがなければ、先程述べた新しい事業への展開など、高齢者の「生きがいづくり」は困難である。事業一つをとっても、実際に地域で活動している同胞のみでは、専門性を追求することは困難であり、同胞医療従事者のみでも、各地域独自の同胞高齢者に関する現状や問題、ニーズを把握できない。つまり双方の力が融合した時、在日同胞高齢者の「生きがいづくり」の可能性や展望はさらに広まる。

 結論的に言えばセセデ同士の交流、「横の繋がり」は必要不可欠である。留学同や朝大生はもちろん、それ以外の学生たちも含め、私たちは同胞社会の将来を担うセセデである。よってこれからは、さまざまな立場の学生が一緒に同胞社会について考えていかなければいけない。そのためにまず、既に多くの在日同胞との関係性をもつ私たち、朝大生と留学同は日頃の交流を率先してより活発に行い、互いの在日同胞ネットワークの共有、拡大を目指す必要がある。また、私たちセセデは将来それぞれの地域で活動するようになる。つまり共有したものを、地域に還元することが可能となり、最終的には日本各地への発信が可能となる。

 在日朝鮮人として生きて行くうえで同胞同士の繋がりは不可分の要素であるが、それはまた、同胞高齢者の「生きがいづくり」において同様である。これは同胞高齢者に「生きがい」を与えると同時に、在日同胞社会の明るい未来をもたらすだろう。

 私たちは今回初めて朝大生と留学同による共同研究を行い、互いがセセデの「横の繋がり」の重要性を実感した。共同研究を行うと決まった時は、朝大生も留学同もほとんどの学生が、現実的に論文作成を共同で行うのは無理だろうと思っていた。しかし実際行ってみると、互いが抱いていたイメージや偏見は、容易に崩れた。

 そして互いが身をもって、在日同胞社会のセセデは留学同だけでも朝大生だけでもなく、朝鮮民族の血を受け継ぐすべての人たちだと実感した。また、セセデがしなければいけない事が明確化され、セセデの大切さも改めて知った。これから同胞の数が少なくなっていく現状で、既存の狭いネットワークに捉われたり、互いが個々で活動したりするのではなく、より広い範囲で動かなければいけない。

 専門知識を学ぶ留学同と同胞社会に広いネットワークを持つ朝大生、それぞれできる事が異なる。この双方が協同した時、互いの視野が広まると同時に、とてつもなく大きな力や、今までにない新しい可能性が生まれると思う。この学術フェスティバルや共同研究のような互いに交流する機会を増やし、セセデ同士の交流をもっと行うべきだ。

 今回私たちが行った、朝大生と留学同による初めての共同研究が、今後の交流を活性化させる最初の大きな一歩となり、朝大生と留学同が互いに協力し合って、同胞社会を支えていく良いきっかけになればいいと、共同研究に参加した学生全員が強く思っている。(コリアン学生学術文化フェスティバル委託論文賞=要約担当・崔賀英=委託機関・在日本朝鮮人医学協会)

[朝鮮新報 2009.2.12]