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〈第31回在日朝鮮学生「コッソンイ」作文コンクールから〉 初級部6年生散文部門1等

1年間の入院生活

 ぼくの右足が左足より5センチ短いと知ったのは、2年生のときだった。別に不便だとは思わなかったけど、お医者さんはそれが怖いと言っていた。必ず手術が必要なんだって。信じられなかったよ。

忘れられない春の遠足

 アボジ、オモニは、2・3・4年生の1年1年を、不安の中でぼくを見守っていたのだけれど、ぼくは心配ないといつもサッカーボールばかりけりながら走り回っていたんだ。4年生のときにはキャプテンらしく、誰よりも先にボールを追いかけ回したんだよ。そして、走れば走るほどかけっこがぎこちなくなったんだ。気をつけをしても、休めの姿勢のようになって、しょっちゅう先生に怒られたけど、グッとこらえていたんだ。これは誰も知らない秘密だからね。お医者さんにそれ以上放っておくと背骨がゆがんで頭にまで影響がおよぶって、早く病院に入院しなくちゃって警告されたとき、どれほどショックだったか、体がこおりつくようだったよ。しかも1年間も!

 (まさか! 5年生の1年間学校に行けないっていうのか? サッカーはどうなるんだ?)

 4年生の終了式の日、友達と1年間のお別れのあいさつをした後、みんなが励ましの言葉をくれたんだけど、それがあんまり悲しくってさ。

 5年生の1年間は何もできないまま4回も手術を受けて、座りっぱなしの生活、杖をつきながらの生活、リハビリ生活の1年を送ったんだ。嫌気がさすとき、力をくれたのが友達からの手紙、千羽鶴、ビデオレター、お見舞いだった。26人全員が病院に来てくれた時の感動は忘れられない。

 そのときの感動以上に今は夢のような毎日なんだ。かわいい弟や妹たちと乗る通学バス、毎朝教室に入ると先生が黒板に書いてくれる「ことわざ」がぼくを迎えてくれる喜び、授業中にプライドなんか忘れて手を上げる満足感、休み時間ごとの追いかけっこ、争いごと、いたずらもこっそりしながら先生に怒られる気まずさ、体育の時間、部活の時間になると走れる楽しさ、4年生まで当たり前だと思い過ごしてきたものが、今はどんなにありがたく感じられることか。というのも、ありがたいことは一つや二つじゃないんだけど、二つのできごとだけは、後々じまんしたいことなんだ。

 一つは、1学期の春の遠足のときのこと。サイクリングと散策でスケジュールが組まれていて、ぼくには無理な遠足だとあきらめて行かないことに決めていたんだ。ムホがどうやってぼくの気持ちを知ったのか、一緒に行こうとさそってくるじゃないか。

 「不自由な足じゃ、しょっちゅうみんなに遅れるし、迷惑をかけたくないんだ。ぼくに気をつかってくれるのも悪いし…」

 「ぼくがいるじゃないか、気にするなよ! ずっと一緒に遊ぼうよ!」

 ぼくはこみ上げる涙をがまんした。オモニは涙を流していた。ついに行くことになり、1年ぶりの友達との散策は、興奮また興奮の連続だった。サイクリングは見ているだけだったので30分間がつまらなかったけど、先生が一緒にいてくれたんだよ。だけど、いつの間にか先生は低学年のちびっこたちの間に交じって、いろんな自転車に乗って遊んでいるんだ。ぼくの友達は、サイクリングより面白そうに見えて、うらやましくて先生を幼稚だと冷やかしながらカラカラ笑い、ぼくもにっこりと笑ってしまったその日。

 二つ目の話は、忘れられない大運動会だ。100メートル競走に出るか出ないか、迷いに迷って結局やることに決めたんだ。足を引きずりながらだと友達と勝負にならないけど、走りたい気持ちは抑えられなかった。スタートラインに立ったぼくの胸ははち切れそうにドキドキしたし、スターターのピストルが鳴り同時に駆け出す友達に追いつこうとしても、10メートル、30メートル、50メートル離れていくばかりで、ゴールがあまりに遠くてそのまま逃げ出してしまいたいと思った瞬間、励ましの放送とともに拍手が鳴り響いた。ありったけの力でゴールのテープを切った感動、どんな言葉で表現したら良いんだろう? すべての競技はぼくに力と勇気を与えてくれた。運動会を終えて、オモニを見るとどれほど泣いたのか目がパンパンにはれ上がり、ウサギの目のように赤かった。

 (オンマ、1年間何十回も見た涙だけど、今日の涙はちがったでしょ?)

 ぼくが2年分を楽しもうと勇気100倍で競技に挑んだので、足への負担があまりに大きくて、痛みと一緒にかぶのようにはれ上がった足をまた治療することになり、何日間か休むことになったんだ。

 もどかしかったけど、ぼくは努力の大切さを感じながら、勉強も生活も引き続き人より2倍努力する気持ちが胸の中に芽生え始めた。

 そして、毎週水曜日の放課後5時半まで5年生の勉強を一生懸命しようと決めたんだ。国語、社会を1学期に終えて、今は日本語の勉強なんだけど、たまにおかしなことが起こるんだ。内緒で教えてあげるね。先生が教科書を読みながらうたた寝をしていることがあるんだよ。また、ぼくが読んでいる間に眠っていることもあるんだ。授業中、トラの様に集中しろ、うたた寝するなって言っている先生がだよ。日本の歴史を教えてくれながら、独り言をいうこともあったんだ。個人学習を終えるときには、「澤得のおかげで先生も勉強になったよ。ありがとう!」と言いながら送ってくれるんだ。

 5年生の勉強を終えるとき、やっとぼくは6年生の資格をもらえるんだ。

 そのときには友達と肩を組んで堂々と言うからね。

 「ぼくはウリハッキョの長男だ! 最年長らしく、長男としての役割を果たすぞ!」

 その日まで勉強勉強、また勉強!

 (辛いとき、いつも本当の兄弟のように助けてくれる友達がいるのに、できないことなんてないじゃないか)

(西播朝鮮初中級学校 全澤得)

[朝鮮新報 2009.1.30]