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〈第31回在日朝鮮学生「コッソンイ」作文コンクールから〉 初級部5年生散文部門1等

 本社主催の第31回在日朝鮮学生「コッソンイ」作文コンクール1等入選作品の日本語訳(本紙編集部訳出)を今号から4編紹介する。

楽しい往復1000回

 「キヨンー! 先生が呼んでるよー」と、友だちが僕を呼んだ。

 僕は、(また?! どうしていつも僕だけ呼ばれるんだろう…?)と思ったけれど、呼ばれる理由はほとんど同じだ。

楽しい通学の風景

 今日は、何がばれたんだろう…。

 教員室に入ると、担任の先生は、厳しい目で僕をにらんだ。

 「昨日、通学路で何をしたの」

 「ちょっとうるさく騒いでしまいました」

 「なぜ、そんなことをしたの?!」

 (……)

 「どうして返事がないの。今度が初めてじゃないでしょう。もう決してしないように!」

 「はい、二度としません」

 僕はいつもと同じように、頭を下げて教員室を後にした。

 僕は帰り道、友だちとあまりに楽しくおしゃべりをして、それが度を越えてしまうときがあり、昨日もそうだったので怒られてしまった。

 その友だちとは、同じ5年生のキム・リャンテ、キム・アンエさん、3年生のキム・フィホ、ウン・チャンギくんたちだ。通学路は遠いけど、この友だちたちと一緒に通うから、ひとつもつらくない。

 僕は、埼玉に住んでいる。朝は6時30分に起き、30分の間に朝食を食べ、出る準備をして、7時には家を出る。

 家から5分歩くと、バスの停留所があり、晴れの日は時間通りに来るバスも、雨の日は遅れるから、本当に嫌いだ。

 冬は寒くて、とても苦手。

 こんな遠くて寒い通学路を、いつも楽しくしてくれるのは、やっぱり友だちである。

 僕が朝、電車に乗ると、もうそこにはみんなが乗っている。

 同じ電車にチャンギが先に、そしてリャンテ、フィホ、アンエ、僕の順番で乗る。

 初め、車内ではみんなが静かだ。

 だけど、誰かがしゃべり始めると、豆を炒ったようにおしゃべりが始まる。

 「宿題やった?」

 「うん!」

 「まだできてない、どうしよう…」

 「昨日、テレビ観た?」…。

 おしゃべりは止まらない。そうする内に、いつの間にか中村橋に着く。

 そこからバスに乗り、学校がある阿佐谷北一丁目で降りる。

 おしゃべりをしながら歩くので、歩く速度がいつの間にか遅くなって、遅刻をしたことが1度だけある。

 誰かが「これからサッカーやる子は走ろう!」と、言ったりする。そんな時は、学校まで走っていく。

 学校から家に帰る道も楽しい。

 僕とリャンテは、電車やバスの中で、よく国語の暗誦の宿題をする。

 時には、日本語の漢字の宿題も解く。

 いつの間にか興奮しているようで、他の子たちから、うるさいと注意されたこともある。

 バスの中で僕たちを見た他の子たちが、よく先生に言いつけるので、僕はリャンテと一緒に教員室で怒られる。

 でも、通学路での友だちとのおしゃべりや遊び、宿題は、学校生活の中では、サッカーの次に楽しいものだ。

 先生からも、親からも、「落ち着きなさい」「いい加減にしなさい」と怒られる。

 だけど、落ち着くこともできず、いい加減にもできない。どうしよう。

 僕は、この通学路を1年生の時から振り返ってみると、約1000回ほど往復している。

 学校には1年を通じ、240日ほど通っており、その他にも、日曜日や夏休みなどの部活を入れると、1000回を超えるだろう。

 学校が楽しく、通学路が楽しいから、ちっともしんどくない。

 電車内で寝てしまい、終点まで行ってしまったり、手提げカバンや水筒を忘れ、大騒ぎしたことは、1、2回ではない。

 だけど、僕にとっては通学路が本当にうれしく、楽しいものだ。

 最近、僕は以前に比べると、電車内でさわがなくなった。

 弟妹たちがうるさくすると、お兄ちゃんらしく注意するようにもなった。

 たまに下級生が、「お兄ちゃんもうるさいじゃない」と口答えしてくるけれど、上級生らしくしている。

 それは、もう6年生になる日も遠くないからだ。

 先生の話もちゃんと聞き、なるべく電車内で静かに過ごす。

 そして、通学路が騒がしくしなくても楽しい時間になるよう、がんばろうと思う。

(東京朝鮮第9初級学校 金基英)

[朝鮮新報 2009.1.30]