〈朝大 朝鮮自然博物館 G魚類〉 自慢の大同江魚類コレクション |
上流から河口まで全種の展示
昨年の秋、祖国を訪問した。単独で行動したので、寂しさと気楽さのいり混じった数日を平壌で過ごした。ホテルのすぐ脇を流れている大同江辺りを夕方散歩した。 河川敷、鉄橋の下で釣りを始めようとする老人を見かけた。しばし足を止め様子をうかがっていると、彼は練り餌の団子に針を仕込み、なんと釣竿ではなく遠投専用に作成したであろう器具(2メートルほどの棒の先に餌台がついている)に餌団子を乗せ、一振り。およそ30メートル仕掛けを飛ばした。糸の先は手元の鈴がついた短い棒につながっている。魚が餌に食い付けば鈴が鳴って知らせるのだ。
10本ほど仕掛けを仕込んで、やおらタバコをふかし始める。鮮やかな手さばきに、少年時代釣りキチでならした私も舌を巻いた。残念ながら夕風が冷たく、老人が大物を釣り上げるのを見届けることなくホテルに戻った。 魚類は地球上で最も多く棲息する脊椎動物である。ウリナラの沿海や河川にはなんと864種の魚が棲息するという。今回は当博物館自慢の大同江魚類コレクションを紹介しよう。 大同江水系には上流から河口まで75種の魚が棲息するが、そのすべての標本が陳列されている。 一つの河川系の魚類を標本にして一堂に展示し観覧できるのは、珍しい上に非常に価値がある。この標本は1999年、金正日総書記が日本で学ぶ朝鮮学生たちに、首都平壌を流れる大同江の自然を身近に感じてほしいと、本大学校に送ってくれた貴重な展示物である。それらの中には日本で見られる魚も多く含まれるが、朝鮮固有の魚が10種、日本では見られない魚も4種ある。
まずは朝鮮固有種から。渓流に棲息するコウライイワナは白頭山地区と大同江水系にしか棲息しない。体側部にパーマークがあり、朱色の小斑点がちりばっている。日本に住むオショロコマに似た魚である。 そしてヤナギナマズ。朝鮮名はサンメギ、山のナマズという意味だがその名の通り渓流に棲む非常に珍しいナマズである。河川中流や沼に棲むいわゆるナマズを少し細長くした体型である。ぜひご覧いただきたい。 大同江の名を冠する魚もいる。大同江エツ、大同江シラウオ、大同江ヒメシラウオだ。これらは元来河口領域(汽水域)で棲息していたのだが、西海閘門が建設され淡水に適応した魚たちだ。ほかにもチョウセンイチモンジタナゴ、コンゴウハヤ、コウライオヤニラミなど朝鮮特産種が所狭しと並んでいる。 ウリナラの固有種ではないが日本に棲息しない魚も紹介しよう。マンシュウマスはサケ科の中では珍しく口が小さい。陸封型のマスでユーラシア大陸の寒い地方に広く棲息する。見た目は口の小さいニジマスのようだ。トガリヒラウオ、ヒラウオはコイ科の魚で、両者とも体型はヘラブナのようだが背鰭がサメの鰭のような形だ。ロシアや中国にも棲息しており食用にされたりもする。 このような魚を見ると、やはりウリナラは大陸と直接つながっているのだなと実感する。そして、その豊かなウリナラの自然をずっと守っていきたいと思うのである。 筆者は研究の材料として魚類や両生類を扱ってきたが、この春初級部に入学する息子たちのために、そろそろ日のあたる自然の中で魚釣りのレクチャーでもしようかと思っている。(李景洙、朝鮮大学校理工学部准教授) 朝鮮自然博物館へは「朝鮮大学校国際交流委員会」へ電話連絡のうえお越しください。 朝鮮大学校 東京都小平市小川町1−700、TEL 042・341・1331(代表)。 アクセス ・JR中央線「国分寺」駅北口より西武バス「小川上宿美大前行き」または「小平営業所行き」「朝鮮大学校」下車徒歩1分 ・JR中央線「立川」駅北口より立川バス「若葉町団地行き」、終点「若葉町団地」下車徒歩10分 [朝鮮新報 2009.1.28] |