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〈民族楽器のルーツをたどる ウリナラの楽器 H〉 臥箜篌、豎箜篌

ハープのような優しい音色、いろんな形と絃の数

ワゴンフ

 新年最初の楽器は、前回に続いて古楽器の箜篌を紹介しよう。

 箜篌は、古代中国・朝鮮・日本で使われた撥絃楽器の一つでハープに似ている。日本では百濟琴と呼ばれている。

 種類は、臥箜篌(ワゴンフ)、豎箜篌(スゴンフ)、小箜篌、大箜篌と絃の数が異なるいろいろな形の物がある。

 はじめに紹介する臥箜篌は、「臥」=寝ているコンフとの意味。

 船の形に作られた共鳴筒には13の絃が斜めに張られている。ワゴンフは曲がった形が鳳凰に似ていることから鳳首箜篌とも言われる。絃が共鳴筒に斜めに連結されていて、共鳴筒にはケヤキなどを、絃は絹糸が使われている。

ソゴンフ

 次に豎箜篌は、「豎」=立っているコンフという意味。スゴンフは21の絃が共鳴筒に垂直に連結している。ハープのように音色がきれいで音量が大きい。 楽器を作る材料はワゴンフと同じで、ワゴンフ同様、高句麗時代に使われたという記録があるが、その後の痕跡を探すことはできない。

 スゴンフはエジプト・ユダヤ・ギリシャなどの地で流行し、その後、ペルシャ・インドに伝えられ、ここで東西に伝播したと思われる。そのうち中国に渡った楽器はコンフと呼ばれ、ヨーロッパに渡った楽器は西洋楽器のハープとなる。

 小箜篌は、スゴンフより少し小さくて、絃に細い鉄絲を使った。コンフの中では13絃で一番小さい楽器である。

 楽器を作る材料はワゴンフと同じだ。 曲がった部分が共鳴筒になっている。

 新羅の聖徳王により作られた上院寺(江原道平昌郡)の梵鐘にコンフを演奏する人の姿が刻まれているが、それを見ると今のソゴンフと同じで、取っ手を腰に付挿し両手で演奏する様子が伺える。

スゴンフ

 大箜篌は23絃で、ソゴンフと同じ形だがそれより大きい。下柱を腰にあてて演奏する。百済から日本へ伝わったのはテゴンフで、今もその楽器は奈良の正倉院に保存されている。

 ワゴンフとスゴンフについては、隋書で高句麗音楽が初めて紹介される中で主要な楽器として取り上げられている。コンフの姿は「三国史記」樂志の百済楽にもあり、前述した新羅の上院寺の梵鐘の他にも、1980年に発見された渤海文王(三代目王)の四女ジョンヒョ王女が葬られた古墳壁画にも描かれている。

 高麗時代に入っても音楽構成にコンフが含まれていることから、三国時代に高句麗が西域の音楽を受け入れながら普及され、高麗時代(睿宗1079〜1122)まで広く使われた事がわかるが、その後はわが国の音楽から消えて行く。淋しい事だが、時代や歴史の流れの中で姿を消したのだろう。南朝鮮では1937年に中国から一台ずつ輸入した、ワゴンフとスゴンフがあるだけにとどまっている。

 朝鮮では1960年代からワゴンフの改良が始まり、絃を13絃から20絃にする事で音域を広げ、筒を大きくして音量にも幅を持たせた。そのような改良の結果、演奏の場を広めたとされているが、現在に至っては演奏される事がほとんどなくその音色を耳にするのは難しいようだ。(康明姫・民族音楽資料室)

メモ…

 隋書:中国二十四史伝の一つ。高祖 李淵(初代皇帝566年)、太宗 李世民(二代目皇帝)、高宗 李治(三代目皇帝)の隋三代を扱った歴史書。全85巻。

[朝鮮新報 2009.1.16]